第八話 清洲攻めその八
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「よいな、それで」
「では」
こうしてその迫る敵軍を見据えてであった。
今その動きを見る。敵は敢然と中軍に向かって突き進む。
そして間合いに入った。そこでだった。
信長はその目をかっと見開き。采配を大きく上から振り下ろした。
「撃て!」
「撃て!」
命令が復唱された。そうして。
中軍が持つ全ての鉄砲が火を噴いた。それと共に轟音が轟く。
「なっ、鉄砲か!」
「何だあの数は!」
「三百はあるぞ」
その三百の鉄砲の一斉射撃を受けていきなり多くの兵が倒れた。
そしてだ。彼等はここで動きを止めてしまった。
「馬鹿な、うつけめあれだけの鉄砲を持っていたのか」
「しかもあの槍は」
「何だ、あの長さは」
「ええい、怯むな」
しかしである。ここで敵の総大将である信友が叫んだ。
「ええい、何をしておるか!」
「殿!?」
「相手はうつけじゃぞ!」
こう敵軍を見据えながら叫ぶのだった。
「一気に突き崩せ!どうということはない!」
「は、はい!」
「それでは!」
「太膳!」
ここで腹心を呼んだ。
「おるな」
「はっ、ここに」
その太膳がすぐに彼の傍に来た。
「そなたも行け」
「そしてそのうえで、ですね」
「そうじゃ。うつけの首を取れ」
こう命じるのであった。
「よいな」
「はっ、それでは主力を率いそのうえで」
「後詰も全て注ぎ込め」
信友は太膳にこうも言った。
「我等の軍全てを注ぎ込んで攻めればうつけが防げるものではない」
「その通りです。所詮はうつけです」
この男もであった。信長をこう見ていたのだ。
「ここで一気に攻めれば」
「鉄砲なぞ所詮は一撃で終わるもの」
信友は鉄砲も甘く見ていた。
「所詮はあれで終わりよ」
「では。今こそ」
「突き進みそれで崩せ」
そうせよというのであった。
「よいな」
「御意」
こうして太膳が率いた主力が信長の中軍に突き進んできた。一度止まった態勢を再び整えてだ。そのうえで、であった。
だがその間にだ。信長の軍勢は既に次の動きの備えをしていた。そうしてであった。
敵が再び来る。それを見計らってだ。
前線で指揮を執る坂井が命じたのであった。
「よいか、もう一度放つぞ」
「はい」
「鉄砲を」
「そうじゃ。いけるな」
己の率いる兵達を見据えてそのうえで問う。
「もう一撃じゃ」
「そのもう一撃奴等を撃ち」
「それで」
「さらにじゃ」
ここでまた言う坂井であった。
「次はわかるな」
「ええ、それは」
「訓練通りですね」
「そうする。よいな」
「わかりました。それでは」
「敵を引き付けて」
敵軍はその間にも来ていた。そうしてであった。
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