第八十四話 炎天下その二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そしてその汗を手で拭いながらだ。こう言うのだった。
「しかも喉も渇いておるわ」
「それはわしもじゃ」
前田はすぐにだ。こう川尻に返した。
「それでさっきからたまらんのじゃ」
「そうであろうな。とにかくここは水がない」
「その通りじゃ。水っげは何もないわ」
「これでは。戦が大変じゃな」
川尻はこのことについても考えた。
「こうまで水がないとのう」
「そうじゃな。どうしたものか」
「ははは、その時はです」
三人が困った顔をしているとだ。ここでだ。慶次が来た。彼は笑顔でこんなことを言った。
「馬の小便を飲みましょうぞ」
「馬鹿言え、そんなものが飲めるか」
「冗談も大概にせよ」
すぐにだ。前田と佐々がその慶次を叱った。
「というか小便なぞ飲んでもかえって喉が渇きそうじゃ」
「匂いだけで駄目であろう」
「しかし。いざという時はです」
まさにだ。水が本当になければだと。慶次はその時のことを話すのだった。
「それでも飲むしかありませんぞ」
「その馬の小便をか」
「そうしたものをか」
「生きねばなりませぬ故」
まさにだ。その為にだというのだ。
「そうせねばなりませぬぞ」
「他のものなら飲めるぞ」
川尻はこう慶次に返した。
「小便以外ならのう」
「つまり水でござるな」
「それか酒じゃ」
「酒はそれがしも好きですが」
「いや、わしが飲むのじゃ」
川尻は笑ってみせてそうしてだ。慶次に対してまた言葉を返した。
「全てのう」
「おや、鎮吉殿は酒好きでございましたか」
「好きじゃ。しかしそれは御主もであろう」
「確かに」
慶次は悪戯っぽく笑ってみせてそのうえでだ。川尻に言った。
「嫌いではありませぬ」
「そうじゃな。確かにな」
「それこそ幾らでも飲めます」
実際に慶次は酒好きでもある。大柄なせいか飲む量もかなりだ。しかし酒癖はよくだ。飲むとさらに陽気になることでかなり知られているのだ。
その慶次にだ。今度は可児が言ってきた。
「御主は茶だけではないのか」
「そうじゃ。知らなかったのか」
「いや、知ってはいたがじゃ」
だがそれでもだとだ。可児は言うのだった。
「それでもその飲む量はじゃ」
「知らなかったというのじゃな」
「御主はうわばみだったのか」
「うわばみと飲んでも勝てるぞ」
慶次は大きく笑って可児に返した。
「それこそのう」
「やれやれじゃな。しかしじゃな」
「うむ、酒を飲むならこの戦の後じゃ」
見れば彼も可児もだ。二人もだった。
顔中汗だくになっている。そしてそのうえで話をしているのだ。
「この暑い中での戦の後でじゃ」
「そうじゃのう。しかし」
ここで慶次がまた言った。
「こう暑いと泳ぎたくなるわ」
「川でじゃな」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ