第八十三話 明智の覚悟その十
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「恐れ多いことを」
「そんなことをすれば何が起こるかわかりませんぞ」
「崇りが起こってもおかしくはありませぬ」
「そうしたことをしているのですか」
「その様です」
細川は暗い顔でそうして言った。
「それがしも信じたくはありませぬが」
「ううむ、それならばです」
丹羽は細川のその話を聞いてだ。眉を顰めさせて述べた。
「殿は耶蘇教を決して認められぬでしょう」
「信長公はですか」
「左様です。織田家は元々越前の神主でした」
そこからはじまったのが織田家だ。そこから斯波家に仕えてその斯波家が治めている他の国の尾張に入ってだ。そして今に至るのである。
そこからだ。丹羽は話すのだった。
「ですから殿もどちらかというと神道の考えに近いです」
「信長公は確か日蓮宗でしたな」
「そうです。ですが仏教よりもです」
「神道に近いです」
それが信長の宗教観だというのだ。
「決して神はおらぬというお考えではないです」
「そこは噂にある神や仏を信じぬというのではなく」
「そうしたお考えではありませぬ」
また別の考えだというのだ。信長は。
「そして邪な坊主は嫌われますが」
「他の正しき僧には何もされませぬな」
「むしろ大事にされます」
あくまでだ。正しくない僧のみを嫌い憎んでいるというのだ。ただ僧侶だからどうかというのではなくだ。その正邪を見極めているというのだ。
「そのうえ決してです。正しき寺社はです」
「壊すことはされませぬな」
「はい、決して」
それもしないというのだ。
「何があろうともです」
「では耶蘇教は」
「そうしたことをされれば」
南蛮の僧侶達がだ。寺社を壊せばだというのだ。
「それは間違いなく殿のご立腹を受けます」
「そうなりますか、やはり」
「ですから。それはです」
どうかと。また言う丹羽だった。
「殿のご不興を被り。お怒りを受けます」
「ううむ、それは厄介ですな」
「まして近畿も手中に収められると」
信長が今掌握せんとしているだ。その近畿はどうかというと。
「寺社が多いですな」
「はい、かなり」
「特に石山ですな」
ここでだ。和田が石山のことを話に出した。
「本願寺はです」
「そして延暦寺に金剛峰寺もです」
明智はこの二つの寺についても言及した。
「南都にも由緒ある寺社は多いですし」
「そうした寺に耶蘇教の者が入り」
「寺社を壊せば」
「それだけで騒ぎになりますな」
「政どころではなくなりますぞ」
武田、そして一色に波多野の者達もだ。誰もがだった。このことについてそれぞれ顔を見合わせてそのうえで話す。それはとてもだった。
「耶蘇教は危険ですか」
「この国には入れられませぬか」
「いえ、殿ならばです」
丹羽はここでだ。
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