第八十三話 明智の覚悟その八
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「紅いのです」
「では紅いその酒は」
「葡萄から作っているととか」
「ああ、だからですな」
酒の色と原材料からだ。丹羽が述べた。
「それで紅いのですな」
「その通りです」
「成程。しかし紅の酒となるとです」
「人の血に似ていると思われるでしょうか」
「はい、そう思います」
丹羽は考える目でこう述べた。
「無気味な酒ですな」
「しかし南蛮ではです」
「その紅の酒を飲んでいるのですか」
「左様です。しかもです」
細川はこんなこともだ。丹羽達に話した。
「南蛮人はです」
「あっ、それはわかります」
丹羽は細川が今から言わんとしていることはわかった。それで事前に言ったのである。
「南蛮人は背が高く」
「はい」
「顔が白く鼻が高く赤いですな」
「そして髪の毛が金色だったり赤だったりします」
「しかも目の色が青や緑です」
「それは即ち」
「鬼です」
まさにそのままだというのだ。南蛮人の格好は。
「角こそありませんが」
「それでもですな」
「まさに鬼そのものです」
日本に古来からいるだ。その妖怪にだ。南蛮人達はそっくりだというのだ。
細川はさらにだ。こんなことも言った。
「それで紅の酒を飲むのですから」
「鬼が人の血を飲んでいる様な」
「まさにそうした感じになります」
「ですな。知らぬ者が見ればそうとしか思えませぬ」
丹羽は細川に対してこう答えた。
「南蛮人も思ってもよらぬことでしょうが」
「そうです。そういえば織田家には」
「はい、南蛮人もおります」
「そうでしたな。あの飛騨者の中に一人」
「ヨハネスという者がいます」
丹羽が名前を出したのはこの者だった。
「あの者はフランドルとかいう国から来たとか」
「フランドルですか」
「南蛮の。エスパニアとかいう国の中にある国だそうで」
丹羽はここでは日本にある尾張や美濃の様な感じでそのフランドルのことを話した。彼にとっては国の中にある国とはこうした感じのものだからだ。
「そこから来たのです」
「そういえばあの甲冑も剣も」
「南蛮のものですな」
西洋の甲冑に剣がだ。ヨハネスの武具である。彼はその武具を使い戦う。飛騨者の中では力技担当だ。尚彼が騎士であることは殆どの者が聞いているが騎士を正しく理解している者は非常に少ない。
そのヨハネスについてだ。丹羽はまた話した。
「あの者も実際に鼻が高いです」
「確かに。髪は黄金で」
「目は青です」
「鬼に見えますな」
見方によってはだった。ヨハネスもそう見えたのだ。
そしてさらにだ。丹羽はこんなことも話した。
「それに堺でもです」
「南蛮人がいますな」
「近頃では京の都にもです」
南蛮人が来ているというのだ。
「中々賑やかになっています
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