第八話 清洲攻めその七
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その中でだ。蜂須賀は木下と共に左の軍にいた。そこでまた彼に尋ねるのであった。
「のう猿」
「今度は何じゃ?」
「わし等の軍の大将は丹羽様か」
「そうじゃ。その五郎左殿じゃ」
「まだ若いがいきなり軍を任されたのう」
「殿がそう考えておられるな」
「大丈夫なのか?」
怪訝な顔で木下に問う。
「あれだけの若い大将で」
「安心せよ。五郎左様はじゃ」
「うむ」
「柴田様と同じだけ凄い方じゃぞ」
こう言うのである。
「あの鬼の柴田様と同じだけじゃ」
「尾張で最も恐ろしいあの御仁よりもか」
「左様、中々やるぞ」
「そうなのか?どうもな」
「そうは見えんか」
「柴田様は見える」
彼はだというのだ。
「あの顔を見ればな」
「実際にあの御仁は怖い顔だからのう」
「鬼の様にな。しかし丹羽様は」
「痩せてあまりそうは見えぬな」
「それで柴田様と同じ程度と言われてもな」
「まあ見ておれ」
しかし木下はまだ蜂須賀に話す。
「丹羽様はかなりやってくれるからのう」
「それ程までか」
「攻めるは柴田様で退きは佐久間様。見るは林様じゃ」
またこう話される。
「守るはじゃ」
「丹羽様か」
「左様、凄い守りじゃからな」
「守りか」
「さて、そろそろはじまるぞ」
陣が動いていた。織田信友の軍は信長の軍勢の鶴翼の陣に囲まれだしていた。そうしてであった。
その中でだ。木下は己の槍を握り締めてだ。気合を入れた顔で蜂須賀に言ってきた。
「戦がな」
「うむ、それではだ」
「小六、御主も死ぬな」
「ぬかせ猿、御前こそじゃ」
二人は横に並んで互いに言い合う。
「そして戦の後で酒でも飲もうぞ」
「勝利の美酒をな」
こう話してそのうえで戦に向かう。まずはであった。
織田信友の軍勢が動いたのだった。前に来た。
「殿」
「うむ」
信長は林のその言葉に頷いた。
「わし等のところに来たな」
「はい、殿がここにおられることを察しています」
「ははは、それも当然じゃ」
信長はここで大きく笑ってみせた。そうしてであった。
己の軍勢を見る。見れば青の旗以外にだ。白地に黒で永楽通貨が描かれた旗もある。その旗を見てそのうえでの言葉だった。
「あの旗はわしの旗じゃ」
「あえて見せておられるのですね」
「うつけ組みやすしよ」
そしてこうも言ってみせた。
「そう思ってじゃ。わしに攻め寄せるのじゃ」
「しかしここで」
「うむ、まずはじゃ」
林の言葉に悠然と答えてだった。
「鉄砲じゃ」
「はっ」
「中軍の全ての鉄砲をあ奴等に放て」
こう命じた。
「それからじゃ」
「そのうえで、ですね」
「それを合図としてはじめる」
余裕に満ちた態度は変わらない。
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