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戦国異伝
第八十二話 慎重な進みその十三
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そして河内からも攻められている彼等がどう動いてくるか。信長は今このことを考えていた。そしてこう言うのだった。
「三方から攻められては誰もが辛いがのう」
「しかしそれがですな」
 竹中が信長を見つつ彼に問うてきた。
「殿のお考えですな」
「うむ、一方から攻めては向こうもそこに兵を集中させてくる」
 まさにそうするとだ。信長は指摘した。
「だからじゃ。それに対してじゃ」
「別の方角からもそれぞれ攻めてですな」
「敵を惑わし。そのうえでそのそれぞれからも攻めるのじゃ」
 まさにだ。それこそが信長の考えだった。彼はこの考えを実際にここで話してみせたのである。
「そうしておるのじゃ」
「そういうことでございますか」
「では。我等はこのまま進む」
 信長は落ち着いて諸将に告げた。
「摂津、河内、そして和泉は間も無くじゃ」
 こう言ってだ。彼は自ら率いる五万の大軍を摂津に向かわせていた。手は一つ一つ打たれていき。そしてそれが大きなものとなろうとしていた。今はその最中だった。


第八十二話   完


                   2012・3・7
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