第八十二話 慎重な進みその十
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「戦はあくまで国や人を手に入れる為のものであり」
「肝心なのはそれからじゃな」
「手に入れてからのことを考えぬ戦はしてはなりませぬ」
竹中もこのことはよくわかっていた。それでだった。
落ち着いているが確かな言葉でだ。こう信長に答えたのである。
「それはまさに武を貶めるものです」
「そうじゃな。武は本来はじゃ」
「矛を止めるものでございます」
その武という文字をだ。竹中はそのまま言った。
「そうでありますので」
「そうした国や人やものを手に入れる為の戦はじゃな」
「天下人はしてはなりませぬ」
竹中は断言した。それはだとだ。
「矛を止め。そしてです」
「国を治める為、そして人を用いる為じゃな」
「しかも私の為であってはなりませぬ」
竹中の声はいささか厳しい。そしてだ。
そのうえでだ。こうも言ったのであった。
「公の為です」
「そうじゃ。わしもわしの為に戦はできぬのじゃ」
信長もだった。
「それをすることは天下人のすることではないからじゃ」
「では何なのでしょうか」
「そうした私の為の戦をする者は」
「盗人と同じじゃ」
天下人ではなくそれだとだ。信長は森と池田の問いに答えたのだった。
「まさにそれじゃ」
「盗人ですか」
「それになりますか」
「ではわしがよき茶器やおなごの為に戦をする」
それはどうかとだ。信長は二人に例えを出してきたのだった。かなりわかりやすくだ。
「そういった者に仕えたいか」
それは実にあさましいですな」
森がだ。実直に答えてきた。彼らしく。
「その様なものの為に多くの兵を犠牲にするなぞ」
「そう思うな。やはり」
「はい、それはしてはなりませぬ」
森もその言葉は強い。それもかなりだ。
その声でだ。彼はまた信長に言ったのだった。
「殿がその様なことをされればそれがしは何があってもお止めします」
「爺の様にじゃな」
「流石に平手殿の様にはいきませぬが」
そこまでだ。森は直言はしない。だがそれでも彼もまた硬骨漢だ。それで言ったのである。
「それがしもまた、です」
「そうじゃな。与三もそうしてくるな」
「殿の過ちをお諫めするのも家臣の務め故」
実際にこう言う森だった。
「だからこそです」
「そしてそれはじゃな」
「無論それがしもです」
池田もだ。信長で強い声で言ってきたのだった。
「そうさせてもらいます」
「ううむ、爺だけで充分じゃが」
「ですから。殿が若しもそうされればです」
「その時はです」
そうするというのだ。これが二人の言いたいことだった。
それでだ。森と池田は信長にだ。こうも述べた。
「しかし殿はそうした方ではありませんので」
「このことは安心しております」
「ですが何時でもお諌めさせてもら
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