第八十二話 慎重な進みその八
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「いえ、そのこともです」
「御存知だと仰るのでしょうか」
「承知も何よりも」
「何よりもとは」
「この戦国では普通だと思いますが」
これが明智のだ。信長の傾奇に対する考えだった。
「そう思いますが」
「傾くもですか」
「左様です。織田家の青もです」
織田家の象徴になっているだ。青い具足や旗、そういったものもどうかというのだ。
「武田家や上杉家を見ますと」
「それぞれ赤と黒ですな」
「今名のある家の多くがそれぞれの家の色を定めております」
明智はこのことをだ。丹羽に話していくのだった。
「その武田殿や上杉殿だけではありませんな」
「確かに。それは」
「そうしたことを考えますと」
「我が殿は」
「個性です」
癖ではなくだ。それだというのだ。
「そうなります」
「殿の身なりもですか」
「それがし。あの道三様との会見のことも知っております」
かつて尾張で行っただ。あの道三との会見のことだ。
「あの時織田殿は行きはその傾いた格好でありましたな」
「はい」
丹羽もいた。それですぐに頷いた彼だった。
「そして会見の場におきましては」
「丹羽殿もおられましたが」
「それがし達もそこであえて」
「青のあの礼装で出られましたな」
「殿もそうされましたが」
「そのことです。いざという時にそうした身なりで出て来れることが凄いのです」
普段は傾いていてもだ。ここぞという時にそれができることがだというのだ。
「これにはあの道三様も驚かれていました」
「でしたな。あの方も」
「それを見て。それがしもまた驚きました」
そしてそれはだ。明智とて例外ではないというのだ。尚明智は美濃にいた頃は隠れた傑物とだ。密かに噂されていた。あくまでひそかにではあるが。
「ですから」
「それ故にですか」
「はい、あの方はここぞという時には果たされます」
例え何があろうともだ。そうするのが信長だというのだ。
「ですから。癖はです」
「殿にとって悪いことではありませぬか」
「では丹羽殿はその織田殿をどう思われているでしょうか」
「天下に二人とおられませぬ」
丹羽はすぐにだ。信長についてこう答えた。
「あれだけの方は」
「左様ですな。では癖は」
「ああであるからこそよいのです」
丹羽は自然に笑顔になってだ。明智に言葉を返した。
「我が殿らしいです。実に」
「そういうことです。強い個性があってこそです」
「天下を目指すことができますか」
「日輪は世を眩しく輝かせるものです」
明智は今度はだ。信長をそれに例えた。奇しくも松永とその家臣達と同じであるが無論明智はこのことは知らない。ただ己が思ったことを言っただけだ。
だがそれでもだ。それを聞いてだ。丹羽はというと。
膝を叩かん
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