第八話 清洲攻めその六
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「そうなのじゃぞ」
「斥候だからか」
「敵の場所を見て確かめればそれでよい。では帰ろうぞ」
「そして本隊と合流するのか」
「うむ。わし等の今の仕事はこれで終わりじゃ」
飄々として蜂須賀に返す。
「では。帰るぞ」
「ううむ、それでよいのか」
「よいのじゃよいのじゃ、戦に勝てばな」
「敵は四千でこちらは五千か」
蜂須賀は腕を組んで頭の中で算数をした。その結果は。
「数では勝てるのう」
「数だけではないぞ」
「他のものでもか」
「まあ見るのじゃ。あの程度の軍勢なぞどうとでもないわ」
「その数信じてもよいな」
「信じなければわしの首があの連中に取られるだけじゃ」
笑って言う。その顔がこれまた猿そのままであった。
「それを詫びとしようぞ」
「馬鹿を言え、御前は死ぬなと言っておろうが」
蜂須賀はひょうきんな仕草で笑う木下に対して真面目な顔で返した。
「ではその言葉信じるとしよう」
「うむ、それではじゃ」
「下がるのじゃな」
「そうじゃ。ではな」
「うむ、わかった」
こうしてであった。木下と蜂須賀が率いる斥候は退き本隊と合流した。そして斥候からの連絡を受けた信長はだ。すぐに全軍に指示を下すのであった。
「敵の布陣は魚鱗、ならばじゃ」
「どうされますか」
「ここは」
「戦の常道に則る」
まずはこう家臣達に告げる。
「鶴翼じゃ、よいな」
「はっ、それでは」
「すぐに」
「右は権六」
柴田に告げる。
「そして左は五郎左じゃ」
「それがしがですか」
「そうだ、五郎左そなたじゃ」
驚く丹羽に鋭い目で告げる。
「そなたは権六が追いやる敵を左で受けよ」
「それがしの軍で、ですか」
「左様。そうして敵を逃すな」
そうせよというのである。
「そして右の軍には久助と赤母衣じゃ」
滝川と赤母衣衆の面々を見据えて告げる。
「又左、五郎八、九郎」
「ははっ」
彼等がそれぞれ主の言葉に応える。
「よいな」
「畏まりました」
「慶次もじゃ」
彼の名前も出した。
「右に入れ。そしてじゃ」
「左もですね」
「そちらには」
「菊千代、勝三郎、与三」
まずはこの三人であった。
「その方等がつけ」
「わかりました」
「それでは」
「与三よ」
ここで特別に森に声をかける。年配の彼にだ。
「そなた、五郎左をよく助けよ」
「承知しております」
森はすぐにこう主に返した。
「それでは」
「新五郎、牛助、そして黒母衣の者はわしと共に中軍にいよ」
最後には中央であった。
「敵の攻撃をわし等で受けるぞ」
「わかりました」
「それでは」
「では全軍先に進め」
ここまで告げてであった。信長はあらためて進撃を命じたのであった。
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