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戦国異伝
第八十二話 慎重な進みその一
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狭く山も多い国です」
 今度は明智が言った。見れば見事な兜だ。瓢箪が両脇にあり頭には獅子がある。その兜の明智がだ。丹羽に若狭のことを話してきたのだった。
「ですがそれでもです。手に入れられるならです」
「手に入れるのが戦国のならい」
「ですから若狭を取りたかったでしょう」
 こう言う明智だった。
「しかし主である義景殿が動かれぬなら」
「それならばです」
「朝倉家としてはどうしようもありませぬ」
「そうです。だからです」
 朝倉は動かないというのだった。彼等はだ。
「今ここで逃すと若狭は朝倉家の手にはに二度と入らぬでしょうが」
「織田家のものとなるからですな」
「左様です」
 丹羽の言葉は淡々としたままだった。しかしだ。
 その言葉には確かな自信があった。そのうえでの言葉であった。その言葉でだ。丹羽は明智達にだ。その読みをさらに話していくのだった。
「そして守りを固めるからです」
「ですな。しかし今は武田殿としては備えておかなくてはならない」
 用心の為だ。それを忘れていては何もできはしない。明智は言った。
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