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戦国異伝
第八十一話 信貴山城その十三

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「手に入れるのはのう」
「しかしそれからですな」
「問題は手に入れてからですな」
「そうじゃ。そこからじゃ」
 まさにそこからだというのだ。
「治めることが肝心じゃ」
「織田殿はそこを考えられる方ですが」
「全ては勝ってからですか」
「そういうことになるのう。まあわし等は今は気が楽じゃ」
 今に限定しての言葉だった。
「進むだけじゃからな」
「では。進みましょう」
「今は」
「そうする。ではな」
 実際にだ。松永が率いる先陣は河内に入った。その彼等の河内の国人達は次々と馳せ参じてきた。松永の予想通りだ。河内は瞬く間に織田の青に染まっていった。
 その中でだ。滝川が言った。
「破竹の勢いというのか」
「そうですな。河内は元々です」
「国人達と三好の仲が悪かったとか」
「はい」
 その通りだとだ。雪斎が滝川に答える。
「ですから我等が来てです」
「すぐになびいていった」
「そういうことです。しかしです」
 雪斎は顔を引き締めさせそのうえで滝川にこうも述べてきた。
「すぐになびくということはです」
「また旗色が変わればですな」
「三好にはなびかずとも」
「他の家になびくことも有り得ますな」
「薄は風になびくものです」
 雪斎は河内の国人達をだ。秋の薄に例えてきた。
「ですから」
「我が家に少しでも不始末があれば」
「すぐに他の家になびきます」
 そうなるというのは三好だけではないというのだ。織田に対してもそうするというのだ。
 そのことを聞きだ。滝川は雪際の言葉を否定しなかった。
「だからこそです」
「問題は河内を手に入れてからですか」
「左様です、政が肝心です」
「河内の国人達をどう治め心を掴むか」
「国人よりも民ですが」
 河内の民、彼等が最も肝心だというのだ。
「あの者達の心を掴んで離さないことです」
「その為には政を。それもよいものを為すことですな」
「それが民を国人を掴む第一です」
「善政はただ民を幸せにするだけではありませんか」
「善行は必ず己に返ってきます」
 この世の摂理もだ。雪斎は話してきた。
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