第八十一話 信貴山城その五
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天守閣の窓は櫓と同じだった。そこを開いて弓矢や鉄砲を使うことが容易に想像できた。そこから下に迫る敵兵を撃つことがだ。想像できたのである。
それを見てだ。滝川は言うのだった。
「成程のう」
「天守閣はそうしたものですな」
「はい、言うならば本丸で最も大きな櫓です」
それに過ぎないと看破する。松永は平然として述べた。
「では。そうして使うだけです」
「櫓として」
「いざという時は」
「左様です」
滝川だけでなく筒井の問いにも答える。しかしだ。ここで彼はこうも言うのだった。
「天守閣に櫓、それに城壁といったものは」
「そして門もまた」
筒井は城門を一つ一つ見ていた。見ればだ。
どれも堅固な立派な門だ。そしてそれだけではなくだ。
門の傍には櫓が常に的確な場所に配されている。尚且つその門がどれも見事な格好だ。そうした門も見ながらだ。筒井は述べたのである。
「見事だ」
「そう言われますな」
「うむ」
その通りだとだ。筒井も答える。
「否定はせぬ」
「左様ですか。それは何よりでございます」
「ではこの城からじゃな」
滝川は城の見事さから話を移して述べた。
「河内に入るか」
「ではこの城に兵を入れますか」
「はい、そうします」
その通りだとだ。滝川は雪斎に答えた。
「この城を足掛かりにしてそのうえで」
「河内に入りますな」
「山城からは殿自ら摂津に入られる」
滝川はまずは摂津から話していく。
「織田の軍勢の主力を率いられて」
「そうしてですな」
「播磨からは勘十郎様が猿等の助けを借りて兵をまとめて」
「そうしてですか」
「そう、そこからも三好を攻めます」
このことも話してだ。さらにだった。
「そして我等もです」
「河内に入りそのうえで」
「そうします。そうすれば三好は必ず破れます」
「左様ですな。我等は三好攻めの重要な一翼です」
「その河内攻めの為に」
まさにだ。その為にだというのだ。
「この城に兵を入れ足掛かりにしましょう」
「ではそれでは」
こうしてだ。滝川は彼が率いる軍勢を信貴山城に入れてそこで休ませてだ。
この城を拠点にして河内攻めの準備に取り掛かった。その中でだ。
武具や兵糧を調べる。するとそれはだ。
「ううむ、見事だ」
「揃っておりますな」
「武具も兵糧も充分にある」
滝川は筒井と共に倉庫を見てそうして唸っていた。彼の前には充分な数の武具や兵糧があった。
とりわけ兵糧を見てだ。滝川は言った。
「これだけの兵糧があれば」
「はい、もう兵糧を集める必要はありません」
「ではすぐにですな」
「兵を休ませ終えて」
そうしてだというのだ。
「河内に攻め入りましょう」
「そうしますか」
「実は兵糧を集めてからにす
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