第八十一話 信貴山城その四
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雪斎はその前に話の間合いを読んでだ。自分がそうしたのである。
「ではやはり」
「はい。その殿だからです」
「松永に対しても」
「やはり見極めておられるのでしょう」
そうしているというのだ。信長はだ。
「それであえて用いられておられるのです」
「そして河内への先導もさせていると」
「左様かと。実際にです」
ここでだ。雪斎は話題を変えた。今度の話題はというと。
「我等を案内するこの道は軍を進めるのにも河内に入るのにもです」
「確かに。そういえば」
「よい道ですな」
「その通りです」
こう述べるのだった。
「実に」
「ではあの男は」
「我等は信用せずともです」
「殿は見ておられる」
「そうなっているかと」
雪斎は滝川の横から彼に話した。
「やはりそうかと」
「ですから。それでは」
「はい、では今は安心して城に入りましょう」
「信貴山の城に」
こう話をしてだ。そのうえでだ。滝川達、大和の国人衆も含めてだ。彼等は松永の居城である信貴山城に入った。その名通り信貴山にあるその城はというと。
山の中にある宮の様だった。櫓も城壁も一つ一つが見事だ。
そしてだ。本丸の中央にだ。それがあった。
「あれはまさか」
「天守閣というものか」
「清洲に殿が築かれていた」
「近頃流行っておりますな」
案内をする松永もだ。それを見て目を瞠る滝川達に述べた。
「天守閣を城の本丸に置くことが」
「ではあれを置かれたと」
「そうだというのでござるか」
「左様です。この城にもどうかと思い」
それでだというのだ。
「築いてみました。如何でしょうか」
「見事」
雪斎がだ。その白い壁に黒の瓦、それに頂上にはそれぞれ左右に黄金の鯱がある三層の天守閣を見て述べた。その言葉には感嘆がある。
「そう言う他ありませぬ」
「そう言って頂けますか」
「清洲や岐阜のものにも引けは取りませぬ」
織田家の象徴とも言えるだ。その二つの城の天守閣と同じ位だというのだ。
「いや、これは」
「そう仰いますか」
「左様です」
その通りだと。雪斎はまた松永に答えた。
「よくぞここまでのものを築かれましたな」
「色々と考えました」
「色々とですか」
「はい。どの様な天守閣がいいかです」
そしてそのうえでだというのだ。天守閣を築いたというのだ。
そのうえでだ。自分でその信貴山城の天守閣を見上げつつだ。松永は滝川達に述べていく。
「しかし外観だけです」
「では中は」
「櫓と同じです」
城の所々にあるだ。その櫓達だというのだ。
「中には鉄砲や弓矢がありです」
「ではいざという時は天守閣に入りですか」
「そのうえで」
「戦います」
そうするというのだ。城での戦となればだ。
「あ
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