暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第八十話 大和糾合その七
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 ふとだ。滝川はあの男を思い出してだった。
「そういえば津々木もまた」
「その者は確か」
「はい、勘十郎様を惑わしたぶらかした者です」
 あの者のことをだ。雪斎に述べたのである。
「あの者もまたです」
「ですな。あの勘十郎様を惑わすとは」
 雪斎はそこに尋常ではないものを見ていた。そのうえでだ。
 一旦瞑目しそのうえからだ。こう言うのだった。
「その津々木という者、どう考えても」
「只者ではありませんな」
「左道を学んでいるのでしょうか」
 雪斎は眉を曇らせてこう述べた。
「度々聞くことを考えますと」
「その可能性はありますな」
「そうかと」
「ううむ。ではあの時倒せなかったのは」
「左道故かと」
 こう滝川に述べる雪斎だった。
「あれは剣では中々相手にできませぬ」
「それで、でざるか」
「はい。拙僧も左道の存在は聞いておりますが」
 だがそれでもだというのだ。
「実際にこの目で見たことはです」
「ありませぬな」
「そうした術は。外道の術故」
 使ってはならない術、それ故にだというのだ。
「使う者もそうはおりませぬ」
「そうですな。大抵は好き好んで左道なぞ」
 入らないとだ。滝川も深い顔で述べる。
「外道を歩みたがらないものです」
「そうです。あれは闇の力です」
 左道、即ち妖術はそうだというのだ。
「光にありはしませぬ故」
「その様な術なぞ」
「誰も使いたがりませぬな」
「はい、大抵の者がです」 
 そうだというのだ。大抵は好んで外道を学ばないというのだ。
 だがそれでもだった。雪斎はここでこうも言ったのである。
「しかし。中にはそれぞれの求めるものに目が眩みです」
「欲に捉われ」
「それを求めるあまりです」
「左道に入ってしまう」
「そうなってしまう者も稀にいるのです」
「それがあの者でしたか」
「津々木だったかと」
 そうではないかというのだ。こう言ったのである。
「あくまで話を聞いただけですが」
「それでもそう思われるのですね」
「はい」
 まさにその通りだと答える雪斎だった。
「そしてその闇ですが」
「闇が一体」
「妖気を漂わせる闇もそうはありませぬ」
「そうした闇はですか」
「ありませぬ。しかしあの男は」
「松永久秀は」
「どうしてもよからぬものを感じてしまいます」
 そしてそのよからぬものがだ。何かというのだ。
「そうしたものをです」
「感じられますか」
 今度は筒井が雪斎に尋ねる。
「では松永めも」
「どうでしょうか。拙僧は津々木という者は知りませぬ」
「では」
「今は何とも言えませぬ」
 雪斎は筒井の問いにこう答えるしかなかった。
「津々木という男のことは知りませぬし」
「だからでございますか」
「そ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ