第八十話 大和糾合その六
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「やはり噂にならない筈がなく」
「そしてですな」
滝川はここからの話はすぐに察してだ。雪斎に述べた。
「その氏素性がわからない筈がないと」
「そうです。しかしあの御仁の氏素性は」
「わからないですか」
「全くです」
何一つだというのだ。松永の氏素性はだ。
「妙なことにです」
「そういえばそうですな」
滝川もだった。目を顰めさせて雪斎に応える。
「あの者、氏素性もそもそも三好家に入るまでのことが」
「わかりませんな」
「悪者にしろかなりの者なのは確かです」
「しかしそれがわからぬとなると」
「大殿は」
織田家でこう呼ばれる者は二人いる。一人は信長の実父である信秀にもう一人は帰蝶の父であり信長の義理の父である斉藤道三だ。ここでは道三のことを指す。
「僧侶から油売りになり土岐氏に仕えました」
「その出自等もわかっていますな」
「はい、全て」
「道三様程の方ならその資質の大きさ故に氏素性もです」
「わかるというのですか」
「はい、そうなります」
こう話すのだった。
「それは自然とです」
「わかってくるものだと」
「大輪はその茎までです。やがては見られるものです」
「その茎が」
「はい、大輪だけが見られるものではないのですから」
「しかし松永弾正は」
「茎がわかりませぬ」
わかるのはだ。花だけだというのだ。
「一体どうした茎か」
「確かに妙ですな」
「それがしもこんなことははじめてです」
長きに渡って学び多くの者を見てきただ。雪斎でさえもだというのだ。
「ああした者を見て知ったのは」
「では何者なのか」
「それすらもわからぬと」
「間違いなくかなりの師を持ち相当なものを学んでおります」
雪斎がわかるのはこのことまでだった。
「ですが。何時何処で誰にかといいますと」
「そしてその学識等の程度もですか」
「何一つとしてわかりませぬ」
「面妖にも程がありますな」
滝川がこう言うとだ。筒井達大和衆の面々もだった。見れば誰もが松永を嫌っている。過去に相当の悶着や戦があったが故にだ。そうなっているのだ。
その彼等もだ。飲みつつ眉を顰めさせて話す。
「家臣達もよくわかりませぬし」
「その信じる宗派もわかりませぬ」
「真にどういった者か」
「氏素性が」
「つまり誰も知らぬと」
滝川は彼等の言葉も聞いてこう述べた。
「まさに謎じゃな」
「そもそもあの九十九茄子はどういって手に入れたのか」
これを言うのは筒井だった。
「あれだけのものをどの様にして」
「九十九茄子だけではありませんからな」
また雪斎が話す。
「他には平蜘蛛もあります」
「あれもそれだけで一国の価値があるとか」
「そうです。他にも多くの茶器を持っておりまする」
「それだけ
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