第八十話 大和糾合その四
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雪斎はしきりに頷きだ。こう筒井に言ったのだった。
「ですな。信長様は家臣を大事にされる方ですから」
「それを聞いたからこそです」
「織田家に入られることを選ばれましたか」
「左様です」
まさにそうだというのだ。
「だからこそです」
「三好ではそうはいかなかったと」
「あの家は我等を完全に取り潰そうと考えておりました」
滝川の今の言葉に不穏な顔になってだ。そのうえでだ。
筒井は再び松永の顔を見る。だが松永は全く動じない。しかもこの場では何も語ることなくただ座っている。まるで何も語ることがない様にだ。
その彼を見てからだ。また言う筒井だった。
「我等を滅ぼし三好の領地にです」
「大和を完全にそうするつもりだったのですか」
「それ故に我等は三好とは対立しておりました」
滝川にだ。筒井はこう話した。
「ですが信長様は違いますので」
「成程。それではこれより」
「我等信長様の家臣として三好攻めに加わります」
それは是非にだというのだ。
「そうさせて下さい」
「畏まりました。それでは」
「国人達が集り次第河内に攻め入りましょう」
筒井はこう滝川達に述べてだ。そのうえで自ら進んで三好攻めに加わると言うのだった。そしてだ。
その夜だ。筒井はこの日集って来た国人達と興福寺の者達と共にだ。滝川達に宴の場を設けていた。しかしその中に松永はいない。それは何故かというとだ。
「あの者はおりませぬか」
「誘ったのですが」
筒井の横の席にいる滝川が答える。彼は大和に入った織田家の家臣の筆頭として筒井の横に来てだ。そしてそのうえで話をするのだった。
「しかしです」
「休んだのですか」
「はい、どうも夜は苦手らしくて」
「なら好都合です」
松永がいないことにだ。筒井はほっとした顔になりだ。
そしてそのうえでだ。こう言ったのだった。
「あの者がいないことはです」
「実はです」
「実はとは?」
「あの者の休んでいる部屋の周りには既に何人も配して警戒を怠っていません」
「そうされているのですか」
「あの男は危険です」
それ故にだというのだ。滝川は盃を手に険しい顔で答える。
「全く油断できません」
「それ故にですね」
「はい、周りに人をやっております」
そのうえで今ここにいるというのだ。滝川も他の大和に入った者達もそれは言う。
そしてだ。また言う滝川だった。
「蠍ですからな。あの者は」
「ですな。あの者はです」
「決して油断できませぬ」
「実はです」
ここでだ。ふとだった。
筒井はだ。こう滝川達に述べたのだった。
「あの者には大和の者達はかなり苦しめられてきていたのです」
「やはりそうなのですか」
「そうです。あの者は三好の者だったのは御存知ですね」
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