暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第七十九話 人たらしの才その十二
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「播磨、そして大和からも攻め入れられてはじゃ」
「囲まれればですな」
「それで、ですな」
 ここで言ったのは吉川元春と小早川隆景だった。元就の息子達にして毛利家の両翼だった。
 その二人がだ。父に応えて言うのだった。
「三好殿はまず敗れる場所にいる」
「そういうことですか」
「そういうことじゃ。既にじゃ」
 囲まれてはどうしようもないというのだ。
 しかしそれだけではないとだ。さらに言う元就だった。
「しかも国人達が次々に織田殿についている」
「国をまとめきれておりませんな」
「その通りじゃ」
 今度は嫡子の毛利隆元が言う。元就は嫡子にも答える。
「その為兵も集らず国の中も綻んでおる」
「それでは戦になりませんか」
「戦の前から既に決まっておる」
 こうまで言うのだった。
「最早そうなっておるわ」
「では敗れるしかですか」
「ありませぬか」
「三好殿はな。緒戦で破れ」
 鴨川の合戦のことである。
「そして今度も破れ近畿からおられなくなる」
「ではやはりこのままですか」
「四国に」
「逃れるしかないですか」
「うむ、まだ力はそれなりにあるにしてもじゃ」
 それでもだというのだ。
「三好殿は敗れる。手を組んでおる他の家もじゃ」
「六角殿に波多野殿もですか」
「そして三好殿に従う国人達も」
「あの公方様も」
 足利義栄のことだ。まだいることにはいるのだ。。
「うむ、全て破れてじゃ」
「三好殿と共に四国に落ちるしかありませんか」
「破れたうえで」
「少なくとも三好殿は近畿を失う」
 このことも間違いないというのだ。
「もっとも三好殿は諦めることはないだろうが」
「ではですな」
 また隆元が言ってくる。
「四国に落ちてもすぐに」
「戦を挑まれるであろうな」
「その時には今以上に力を落とされていると思いますが」
「だれがそれでもじゃ」
「三好殿は織田殿と戦われますか」
「三好殿にも望みがあるし意地がある」
 この二つがあるというのだ。三好にもだ。
「そしてその二つ故にじゃ」
「三好殿はここで破れても織田殿と戦われますか」
「それでも」
 家臣達も唸る様に言う。そしてだ。
 元就は今度はだ。こんなことを言ったのだった。
「して我が毛利はじゃ」
「はい、どうされますか」
「我が家は」
「織田殿とは揉めぬ」
 これがだ、元就の考えだった。
「そもそも毛利家、わしは天下なぞ望まぬ」
「ですな。天下までは」
「そういったものは」
「うむ、決して求めぬ」
 まさにそうだというのだ。天下はだ。
「天下を求めればいずれその野心に操られることになりかねぬ」
「だからこそ野心に惑わされぬ為にもですな」
「天下は」
「うむ、求めぬ」
 こう言ってだ。元就
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ