第六話 上城の初戦その十二
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「ただな。俺としてはな」
「何かあるんですか?」
「金が必要なんだよ」
笑みは軽いものだ。だが。
目は光っていた。その目で言うのである。
「だからな。ここはな」
「貴方が。この金を」
「貰いたいんだがな。駄目か?」
「それは」
「ちょっとした理由があってな。金が必要なんだよ」
笑みのままでだ。中田は上城に話していく。
「だからだよ。いいか?」
「僕は決めましたから」
上城はその彼に対してだ。
毅然とした口調になりだ。こう返したのだった。
その目でだ。中田を見返してだった。彼は言った。
「寄付します」
「だよな。じゃあ俺もな」
「中田さんも」
「やるしかないよな」
お互いにだ。言いだった。
対峙をはじめる。上城はまだ刀を手にしている。だが中田は。
まだ刀を出していない。しかしだ。
今まさに出そうとしていた。気配がある。
それを見てだ。聡美はだ。樹里に言うのだった。
「危ういです」
「そうですね。このままだと」
「闘うことになります」
「あの。剣士同士の闘いは」
「この戦いの主なものですが」
魔物との闘いではなくだ。人間同士のそれがだというのだ。
「それが今はじまるとは」
「どうしたらいいんですか?」
「残念ですが私達は」
聡美はだ。その言葉を曇らせた。
そしてだ。こう言ったのだった。
「どうしようもありません」
「見るしかできないんですね」
「はい、できません」
まさにだ。そうだというのだ。
「あくまで。剣士同士の闘いなので」
「じゃあ。後は」
「上城君は剣士同士の戦いを終わらせると言いました」
上城を見てだ。聡美は今言った。
「ですから。後は」
「上城君次第ですか」
「そして中田さん次第です」
もう一方の相手もだ。外せなかった。
「ですから。今はもう」
「私達ではどうにもならない」
「そうなのですか」
その通りだった。二人はだ。
今は見守るしかできなかった。もう一つあるとすれば祈ることだ。
そうしたことしかできないことにそれぞれ歯痒さを感じ歯噛みもしながらだ。対峙する上城と中田を見ていた。水と炎が対峙していたのだ。
第六話 完
2011・8・22
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