第七十九話 人たらしの才その一
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第七十九話 人たらしの才
羽柴は僅かな従者達と共に荒木の所領である池田に入った。その池田に入るとだ。
羽柴はその従者達にだ。こんなことを言ったのだった。
「さて、ではこれよりじゃ」
「荒木殿の城にですか」
「そちらに向かわれますか」
「そうじゃ。しかしじゃ」
ここでだ。羽柴はだ。
城下町の周りを見回しながらだ。従者達に言ったのである。
「この池田は随分よい場所じゃな」
「そういえば賑わっていますな」
「店も多いですな」
「うむ。荒木殿は中々の器量人の様じゃな」
その街並を見てだ。羽柴は見抜いたのである。荒木のその器量を。
そしてそのうえでだ。彼は言うのだった。
「それだけにじゃ。やはり織田家に迎え入れたいのう」
「器量人ならば尚更ですな」
「織田家に」
「今織田家には少しでも人材が必要じゃ」
それ故にだというのだ。
「だからじゃ。是非共織田家に来てもらうか」
「ですな。では今すぐに」
「池田の城に」
「羽柴秀吉といえば入られるじゃろう」
そう言えば大丈夫だと述べてだ。そうしてだった。
羽柴は賑やかな池田の城下町を見回りながらそのうえでだった。城に向かう。その彼の動きはだ。
当の池田城にいる荒木も聞いていた。濃い顎鬚に剃った髷の男がだ。主の座に座り前に控える者達にだ。低く太い声でだ。こう話していた。
一見すると熊にも見えるが細い知性をたたえた目をしている。その彼の言葉は。
「やはり羽柴殿が来たか」
「近頃織田家でとんとん拍子に出世している御仁でしたな」
「何でも元は百姓の倅だとか」
「それが今では織田家の部将とは」
「またえらく出世したものですな」
男、荒木村重の周りにいる彼の家臣達もだ。羽柴についてこう話す。
「そしてその御仁がここに来ましたか」
「この城に」
「ではその用は」
「やはり我が家をですか」
「うむ、織田家に誘いに来たな」
このことをだ。荒木は読んでいた。そのうえでだ。
不敵な笑みをその髭の顔に浮かべてだ。こう言うのだった。
「面白いのう。確かに最早三好殿には先はない」
「ですな。都に大和を失った今」
「三好殿は四国に逃れるしかありませぬ」
「それでは」
「そうじゃ。最早三好殿についても何もならぬ」
荒木はこのことはわかっていた。完全に読んでいた。
しかしそれと共にだ。彼は言うのだった。
「だがそれでもじゃ」
「このまま織田家に入ってもですか」
「よくはないと」
「織田殿、確かに傑物じゃ」
信長についてもだ。荒木はわかっていた。彼が只ならぬ者であることをだ。
だがそれでもだとだ。彼は言うのだった。
「しかしじゃ。このままあっさりと織田殿につくのもじゃ」
「よ
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