第六話 上城の初戦その七
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「様々な種類の竜がいます」
「そういえばそうですね」
聡美の言葉にだ。先に気付いたのは樹里だった。
それでだ。こう彼女に話すのだった。
「西洋の竜と中国の龍も違いますし」
「そうですね。ですから」
「だからあの竜はああした外見なんですね」
「はい、そしてあの竜は」
どういった竜なのか。聡美は話した。
「樹里さんがお話された通り」
「羊の毛皮を護っていた竜ですか」
「そうです」
まさにその通りだというのだ。
「あの竜です」
「大物ですね」
上城はここまで聞いてこう言った。
「それはまた」
「手強いです」
聡美も言う。
「ただ巨大なだけじゃないです」
「火でも吹くんですか?」
「はい、吹きます」
竜に付きもののだ。それもあるというのだ。
そしてだ。さらにだった。
「しかも。見て下さい」
「んっ?」
樹里は竜の口を指し示した。見ればだ。
小刀の様な大きさと鋭さを持つ牙が三列になって連なっている。その一つ一つから禍々しい黒さの唾液を垂らしている。それを見せてだ。
それを指し示してだ。上城に話すのである。
「牙に。毒です」
「毒ですか」
「しかもあの牙ですから」
「噛まれればそれだけで」
「命の危険があります」
このことをだ。上城に忠告するのだった。
「ですから」
「じゃあ炎と牙と毒に注意して」
「闘って下さい」
「わかりました」
上城も頷く。それでだった。
左手にだ。あの青い刀を出した。すぐにそれを両手に持ってだ。
怪物に向かう。その彼に背にだ。
樹里と聡美がだ。こう言ったのだった。
「死なないでね」
「御気をつけて」
「わかってるよ」
背中越しにだ。彼は樹里に笑顔を向けて。
そうして言ってだ。それからだった。
あらためて怪物を見てだ。刀を構えた。中段だ。
その段で構えそれからだ。
一気に突き進む。その彼に。
竜は首をもたげさせだ。上からだった。
上城に炎を吐きかけた。紅蓮の帯が迫る。
だが彼はだ。本能的に。
その青い刀を下から上に一閃させて。炎を消したのだ。
それを見てだ。樹里が驚きの声をあげた。
「どうして炎が!?」
「水だからです」
驚く彼女に聡美が話す。
「水だからできたのです」
「水は火を消す」
「はい、だからです」
消せたというのだ。竜の炎を。
「それだからこそです」
「そうなのですか」
「ただ。それでも」
「それでも?」
「上城君は凄いですね」
見れば聡美も驚く顔だった。その顔でだ。
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