第六話 上城の初戦その四
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「どのって。ういろうって何種類もあるの?」
「あるわよ。白に黒に抹茶に」
「抹茶もあるんだ」
「それとコーヒー、ゆずに桜に」
「コーヒーもあるんだ」
「そうよ。大体こんな感じ」
ういろうと一口に言っても何種類もあるとだ。実際に言ったのである。
「一杯あるから」
「そうだったんだ」
「それで何を食べるの?」
「さくらかな」
それにしょうかとだ。上城は少し考えてから答えた。
それでだ。こうも言うのだった。
「桜餅好きだし」
「だからなの」
「うん。それでいいかな」
「さくらのういろう美味しいけれど」
これは確かだという樹里だった。
だがここでだ。こんなことも言う彼女だった。
「ただ。注意してね」
「注意って?」
「ういろうは独特の味なのよ」
「ええと、形だけ見たら」
「あれでしょ。羊羹みたいでしょ」
「けれど違うんだ」
「そう。違うの」
実際にこう答える樹里だった。
「羊羹よりも味は三色だんごに近いかしら」
「三色だんごっていったら」
上城はそれを聞いてだ。
自分の頭の中でういろうとだんごを組み合わせてだ。こう樹里に話した。
「あれかな。さくらのういろうって」
「ええ」
「三色だんごの赤みたいな味?」
「そう、あんな感じ」
実際にそうだと答える樹里だった。
「ああいう味なの。食感もね」
「ふうん、面白いね」
「食べたら病みつきになるから」
樹里はにこりと笑ってだ。こんなことも言った。
「もう確実にね」
「ういろうってそんなに美味しいんだ」
「そう、美味しいから」
だからだ。そうなるというのだ。
「食べてみてね」
「うん、わかったよ」
「私も一緒にね」
そしてだ。彼女もだというのだ。
「行くから、そのお店」
「ういろう食べたいんだ」
「だから。私も好きだから」
それでだとだ。にこりと笑って言うのである。
「そうさせてもらうわ」
「ういろうね」
「この学園にもあるのは知ってたけれど」
それでもだというのだ。
「実際に食べたことはね」
「なかったんだ」
「そう、なかったの」
実際にそうだというのだ。
「けれど。今こうして」
「食べられる機会があるから」
「機会があるなら食べる」
樹里は言った。
「それが食べ物だからね」
「チャンスは逃さないんだ」
「特に食べ物は」
樹里はさらに言う。
「その機会を逃したら今度は何時になるかわからないじゃない」
「下手をしたらずっととか」
「それがあるから」
それでだというのだ。
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