第七十八話 播磨糾合その四
[8]前話 [2]次話
「一瞬でも難しいがな」
「それを長くとなると」
「余計にですか」
「焼けた鉄の棒を握る様なものじゃ」
彼は天下を握ることをこう表現してみせた。
「だから長く持つのは余計に辛いのじゃ」
「ではそれを果たすことはですか」
「天下を長く握りこの世に泰平をもたらす」
「それは誰にもできるものではありませんか」
旗本達も言う。そしてだった。
彼はここでまただ。こう言ったのだった。
「そうじゃ。だからこそ見ておったのじゃ」
「織田殿の上洛、それをですか」
「都に入られるまで」
「そこまで何の抜かりもなかった」
六角、三好との一連の戦がだというのだ。確かに一連の戦は信長にとっては満足いくものだった。だが彼が見ているのはそれだけではなくだった。
都に入ってからだ。そのことも話したのである。
「都に入りあれだけの大軍を一糸乱れず率いておられたな」
「はい、しかも乱暴狼藉は一切許されませんでした」
「都は至って平穏だったとか」
「あれだけの大軍が入りながらも」
「そこまで見て決めたのじゃ」
そうだったというのだ。
「この小寺半兵衛はな」
「左様ですか」
「そうされてですか」
「赤松様と別所殿を説得されてですか」
「今も姫路に向かわれるのですね」
「うむ、そうする。そしてじゃ」
ここまで話してだ。彼、小寺半兵衛はだ。
自信に満ちた笑みを浮かべた。そして言ったのだった。
「わしのこの智謀を活かそうぞ」
「この天下にですか」
「そうされますか」
「天下平定にわしの智を使う」
こう言ってだ。彼は小寺家の軍勢と共に姫路に向かった。
その姫路城は見れば小さい。しかしだ。
羽柴はその城の中でだ。こう信行に話すのだった。
「この城は大事ですぞ」
「ただこうして兵を集める場所ではないというのじゃな」
「播磨を治めるうえで。そして」
さらにだというのだ。
「山陽を攻める時も」
「その時もか」
「そう見ておりますがどうでしょうか」
「山陽も見ておるのか」
信行は城の主の間でだ。羽柴の話を聞いてだった。
そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「確かに天下を治めるならやがては山陽も攻めねばならんが」
「だからこそです」
「先の先を読むか」
信行は感心している声になっていた。それからだった。
その羽柴を見てだ。感心して述べたのだった。
「御主は。まことに凄い男じゃな」
「いえいえ。ただ思いついたことを申し上げているだけで」
「しかしその閃きが凄いのじゃ」
「そう仰いますか」
「うむ、見事じゃ」
「だといいのですが」
「今回のことは御主の手柄じゃ」
あらためて言う信行だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除