第七十八話 播磨糾合その三
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「信長様につけば手柄を立てればこれ以上のものは幾らでも貰えまする」
「これだけのものでもかなりですが」
別所氏は織田家と比べれば何ということのない家だ。出せる兵も別所家だけでは数千もない。それでは羽柴が今出した砂金もだ。
思いも寄らないものだ。しかもこれ以上のものが手柄として貰えると聞けばだ。
心を動かされない筈がなかった。それでだ。
別所は目を輝かせてだ。こう一行に言った。
「では我等別所家はこれより何があろうともです」
「織田家に忠義を尽くしてくれますか」
「はい」
まさにだ。そうすると答える彼だった。
「そうさせてもらいます」
「では。今より我等は姫路に向かいますが」
「全軍を以て姫路までお送りします」
即座にだ。自分から言う別所だった。かくしてだ。
信行達は別所に軍勢と共に姫路に向かう。確かに織田家から見れば微々たる家でしかない別所家だが播磨ではかなりの家だ。その家が完全に織田家についたと見てだ。
織田家につくと決めても積極的に動こうとしなかった家、日和見を決めていた家もだ。瞬く間にだ。
織田家につく、動くと決めてだ。姫路に兵を寄せてきた。そしてだ。
別所家の本家にあたる、名目的には播磨の主である赤松家や小寺家もだ。姫路に兵を進めた。その中でだ。
小寺の軍勢の中でだ。一人の皺の深い顔の男がだ。誇らしげに言うのだった。
「わしの読み通りだ」
「といいますとまさか」
「播磨が全て織田殿の旗になびくことはですか」
「読んでおられたのですか」
「うむ、読んでいた」
こう周りのだ。小寺家の旗本達にだ。彼は答える。
「それはな」
「まさかとは思っていましたが」
「別所殿がつくとそれが決め手になり他の日和見の家もつく」
「そして播磨全体が織田家になびく」
「そうなると」
「既におおよそは決していた」
それは既にだったというのだ。男はその目を強く光らせて言う。
見ればただの目ではない。そこには智が感じられる。深い、そして鋭い智だ。竹中とはまた違っただ。そこには剣呑なものさえ含んでいる智だ。
その彼がだ。言うのだった。
「我等に別所殿、そしてじゃ」
「赤松様が織田家につかれた」
「そのことによってですか」
「そうじゃ。もっともわしは上洛の時から見ておったがな」
信長が岐阜を発した、その時からだというのだ。
「そして都を押さえた時にじゃ」
「その時にすぐにでしたな」
「我等の殿だけでなく赤松様と別所殿にもお声をかけられましたな」
「織田家につくべきだと」
「その様に」
「あれで間違いないと思ったからのう」
信長が都を押さえた、まさにその時にだというのだ。
「織田殿はこれから天下を押さえられる。そしてじゃ」
「この播磨にも手を及ばせてくる」
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