第七十七話 播磨入りその十一
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「ヨハネスさんも」
「肴はそうだな。塩以外には魚、蛸もいいな」
「御前何でも食うな、本当に」
「エスパニアにいた時に海の幸を覚えたのだ」
「エスパニア?」
「そうだ。その国は知らないか」
「前に聞いたさ。御前の殿様、王様とか言ってたな」
煉獄はかつてヨハネス自身から聞いた話を思い出しながら話した。
「その人がいる国だよな」
「そうだ。フェリペ二世陛下だ」
「うちの殿様みたいなものか」
「違うところもあるがおおむねは同じか」
「それでそのエスパニアにいてか」
「神聖ローマ帝国からだ。同じハプスブルク家のエスパニアに入ったのだ」
「何度聞いてもわかりにくい話だな」
煉獄には神聖ローマやハプスブルク家と聞いても首を捻るばかりだった。彼にはどうにもわからないことだった。だがそうしたことを話しているうちにだ。
煉獄は大蛇と共にだ。こう尋ねたのだった。
「しかしまた何でこの国に来たんだ」
「だよね。そこがどうもわからないんだよね」
「それで俺達のところに流れ着いたのは」
「どうしてなのかな」
「カトリックの司祭殿、異端審問官であられるのだが」
ヨハネスはここで遠い目になった。そのうえでだ。
己の過去のことを思い出しながらだ。二人、そして仲間達に話すのだった。
「その方の過酷な拷問、それに意見を述べたところだ」
「国にいられなくなったのか」
「それでこの国に来たのかな」
「私は陛下のお蕎麦に仕える身でありポーザ侯爵のお言葉もあり東に行かされることで済んだ。だが任務でこの国に行く途中で船が嵐に襲われ沈みだ」
「で、日本に流れ着いて後はだったな」
「たまたま堺に忍の仕事で来ていたおいら達と会って一緒になったんだったね」
「そうだ。これも運命か」
出会いの時のことを振り返りながら言うヨハネスだった。その青い目は遠くを見ている。
「貴殿等と共にいるのもまた」
「まあそうだろうな。それが手前の運命ってことさ」
「おいら達と共にいるのがね」
「最初はこの国の言葉もわからず戸惑った」
今の様に流暢に喋るどころでもなかったのだ。
「しかしそれも変わった」
「そうだな。今じゃな」
「字だって書けるしね」
日本の字だ。彼はそれもまた学んだのだ。
「で、やがてはかい?」
「国に帰りたいのかな」
「さてな。自分でもわからない」
そのことについてどう思っているか、それはだというのだ。
「だが今はだ」
「わし等と一緒にいてか」
「信長様にお仕えするんだね」
「その通りだ。そうさせてもらう」
こう言ってなのだった。彼もまただった。
飛騨者の一員として信長に仕える。そのことを選んでいた。
そしてその彼がだ。仲間達に言った。
「ではだ」
「ああ、それじゃあな」
「丹波の山
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