第五話 剣士の戦い五
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「ここまでわかっただけでも凄いですし」
「ですから」
「そうですか」
「はい、ですからそんなにです」
「謝られないで下さい」
二人は聡美に対して親身になって話した。
「僕達に謝るようなことじゃないですし」
「そうですよ」
「そう言ってもらえますか」
しかしだ。二人にそう言われてもだった。
聡美はまだ申し訳なさそうな顔をしていた。そうして言うのだった。
「それならいいのですが」
「ええ、じゃあ」
「そういうことで」
謝罪めいたものはそれでいいとした。そのうえでだ。
上城はだ。聡美にまた尋ねたのだった。
「あの、願いですけれど」
「はい、それですね」
「それでお互いに戦って殺し合うんなら」
それならだというのだ。
「僕、願いはなくていいです」
「願わなくてもですか」
「はい、いいです」
こう聡美に話すのである。
「そこまでして手に入れたいものなんてないですから」
「そうなのですか」
「僕剣道は好きです」
それはだというのだ。剣道はだ。
「ですが剣道は自分の鍛錬の為で」
「戦う為ではないというのですね」
「中には違う人もいます」
そのだ。中田に成敗された中学教師の如き輩だ。勝つ為の剣道を生徒に強要しそのうえで負ければ八つ当たりめいた体罰を行う。それは何故かというとだ。自身が顧問を務める部活の成績がよければ教師としての己の評価があがりそれが名声や出世につながるからだ。
つまり生徒はそうした教師の道具に過ぎないのだ。こうした教師が存在し教師という『聖職者』であるということだけで尊敬される、こうした摩訶不思議な怪奇現象が起こるのは日本だけだ。
実際には教師はその閉鎖された社会、そして日教組という組織の存在が大きい為に起こっている自浄能力のなさ故にだ。異常な者がいたりする。異常者はどの社会にもいるがとりわけ教師の世界では多いのかも知れない。
そうした教師を念頭に置いてだ、上城は今話すのだった。
「ですが僕はです」
「違うのですね」
「はい、僕はあくまで、です」
どうかというのだ。彼は。
「自分自身の鍛錬の為にです」
「剣道をしているのですね」
「活人剣です」
まさにだ。それだというのだ。
「部活の先生もそう考えておられます」
「いい先生ですね。そして」
「そして?」
「上城君も」
他ならぬだ。彼自身もだというのだ。
「いい方ですね」
「そうでしょうか」
「そう思います。だからでしょう」
上城のことを考えだ。聡美はこう述べた。
「願われないのは」
「別にそれでもいいですよね」
「はい」
構わないというのだ。
「それでも。戦わなくてはいけないのですから」
「だからですね」
「そうです。願いがあろうがなかろうが」
それでも
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