第四話 中田の告白その十一
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「また会おうな」
「今日は戦うことは」
「ああ、しない」
それはしないと。中田ははっきりと告げた。
「気が向かないんだよ」
「あの、気が向けばって」
「いいだろ。今命のやり取りなんてよ」
したくない、これが中田の本音だった。
その本音をだ。上城もわかってだった。
「そうですか。中田さんも」
「御互いに因果だな」
「こんな戦いって」
「まあ話はこれで終わりな」
上城にそれ以上は言わせずにだった。
中田はその場から消えた。そしてだ。
夜道を歩きながらだ。声に言うのだった。
「なあ」
「あの少年のことですね」
「他に十一人だよな」
「はい、全員で」
「あまりな。やっぱりな」
こうだ。中田は浮かない顔で声に言うのである。
「好きになれないな」
「人と戦うことはですか」
「そっちがメインだよな」
怪物と戦うよりだ。そちらがだと声に尋ねる。
「だよな」
「はい、そのうえで願いを適えるのですから」
「俺もな」
中田もだ。どうかというと。
「親父もお袋も美和子もな」
「助けたいですよね」
「手術は金で何とかなるさ」
それはだ。怪物達を倒してだった。
「剣士を倒したら怪物のそれとは比べものにならない位にだよな」
「黄金が手に入るのも事実です」
「けれど怪物で済むのなら」
それで充分な金が入るならというのだ。彼は。
「それでいいんだよ」
「ですが」
「ああ、完治しないからな」
黄金でどうにかできるのは手術だけだった。
「一生寝たきりらしいからな」
「三人共ですね」
「だから完治させる為にな」
その為にだった。彼も。
「生き残るさ、俺は」
「あの子も」
「正直考えたくないさ」
上城と戦う、そのことはだった。
「あいつ悪い奴じゃなさそうだしな」
「悪人なら?あの中学教師の様な者なら」
「容赦しないさ」
そうした輩にはだ。躊躇せずにだというのだ。
「ああした風に叩き潰してやるさ」
「そうしますね」
「あくまで悪人ならな」
そうするとだ。中田は言い切る。
「そうした奴は世の中にいたら駄目だからな」
「それでもですね」
「いい奴にはそうしないさ」
強い声で言う彼だった。
「絶対にな」
「ですが」
「ああ、わかってるさ」
それはだと。また言う彼だった。
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