第一話 うつけ生まれるその九
[8]前話 [2]次話
「御前等はススキの中に隠れろ」
何人かにこう命じたのだった。
「よいな」
「ススキの中にですか」
「そこに」
「そうだ、そこに隠れろ」
前で主力が長い棒の槍を振るっている後ろで命じていた。
「よいな。そしてわしが合図をすればじゃ」
「その時はどうされよというのですか」
「一体」
「敵の横から出て襲え」
そうせよというのだった。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
「そうします」
「そうするがいい。それではじゃ」
こうしてだった。その者達を隠れさせたのだった。そして戦の場ではだった。既に先に銭をやった子供達が力を奮って暴れていた。
「勝てばまた貰えるからな」
「ここは頑張るか」
「ああ!」
こう話してだった。果敢に戦う。その者達の活躍が吉法師の側を優勢にしていた
そのまま向かう時にだった。信長はさらに命じた。
「今だ!」
「むっ!?」
見ている勘十郎が声をあげたその時だった。ススキの中からだ。
何人か出て来てだ。そのうえで敵に横から襲い掛かったのである。
「な、何だ!?」
「伏兵か!」
「急に出て来たぞ!」
「よし、勝ちじゃ!」
吉法師はその伏兵が襲い掛かったところで叫んだ。
「皆の衆、突撃じゃ!勝てば褒美があるぞ!」
「何っ、褒美!?」
「それが!?」
「そうじゃ、それがあるぞ!」
自ら棒の槍を手に敵に向かいながらの言葉だった。
「それが欲しくば戦うがいい!」
「わかりました!」
「それならば!」
こうしてだった。戦いは吉法師達の勝利に終わったのだった。
そうして吉法師は己の軍全員にだ。約束通り銭をやったのだった。
「皆の衆よくやったな」
「はい、有り難うございます」
「褒美まで貰えるとは」
「勝てば褒美があるのは当然のことじゃ」
吉法師は平然と話した。
「だからじゃ」
「勝てば貰えるんですか」
「褒美が」
「これからも同じぞ」
吉法師は銭をやりながらまた話す。
「わかったな」
「勝ったら褒美か」
「これはいい」
「絶対に次も勝つぞ」
「ああ、そうだよな」
子供達は喜んでこう話すのだった。彼等は吉法師の褒美を心から喜んでいた。そして勘十郎はそのはじまりから終わりまで全て見て言うのだった。
「お見事です」
「こうでなくてはいかんのだ」
「人に褒美をやることですか」
「人はただやれというだけでは動かんものだ」
吉法師は帰る時に話していた。二人共馬に乗りそのうえで話している。
「ああしてだ。褒美をやってこそだ」
「そのうえで動くのですか」
「それが結果として人をついてこさせる」
こうも話した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ