第七十六話 九十九茄子その三
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「裸一貫でそこまでなったな」
「はい」
「御主がどういった者か調べさせてもらった」
その氏素性をだというのだ。しかしだった。
だがそれでもだとだ。わかったことは。
「御主についてわかったことは三好家に仕える様になってからじゃ」
「・・・・・・・・・」
松永は答えない。このことについてはだ。
だがその彼に対してだ。信長はさらに話した。
「しかしそれからじゃ。戦もすれば政もしたのう」
「やれることは何でもさせて頂きました」
「どれもそつなく。しかも非常に見事じゃ」
そこも見たのだ。松永の戦や政の才をだ。
「天性のものではないにしてもよくやっておる。才はある」
ならばだというのだった。松永自身に対して。
「わしは才ある者を使う」
「ではですか」
「まさかまことにその者を」
「そう仰るのですか」
「だから待つのじゃ」
信長は再び家臣達に告げた。ここではとかく彼を抑える信長だった。
そのうえでだ。まただった。
彼はだ。松永に対して言った。
「じゃが御主は罪が多い。だからそうおいそれとはじゃ」
「では」
ここでだ。すっとだった。松永はあるものを出してきた。それは。
茶器だった。茄子の形に似た古い茶器だ。それを見てだ。
松井と村井がだ。血相を変えて信長に言った。
「殿、これはです」
「まさかとは思いますが」
「あの本朝無双の茶器」
「九十九茄子ではありませぬか」
「これがか」
信長もだ。その目を鋭くさせている。
そのうえでだ。こう言うのだった。
「わしも噂には聞いておったが」
「実際に御覧になられたことははじめてでしたか」
「御主が持っておるとは聞いておった」
松永を見てだ。そのうえでの言葉だった。
「だが。それでもじゃ」
「左様ですか。しかしです」
「この九十九茄子をわしに献上するというのじゃな」
「はい」
その通りだとだ。松永も答える。
「そうさせて頂きます」
「してか」
「願わくば織田家に」
「話はわかった」
ここまで聞いてだ。あらためて言う信長だった。
だが返答はしない。しかしだ。
信長にだ。池田が怪訝な顔で言ってきた。ここでも言う彼だった。
「殿、九十九茄子はそれがしも知っておりますが」
「それでもじゃな」
「何にせよ相手が悪過ぎます」
松永を警戒する目で見つつだ。実際に身構えながら言う彼だった。
「ですから」
「ふむ。他の者はどうじゃ」
こう問うとだ。まさに誰もがだった。
「それがしも勝三郎と同じ意見です」
「それがしもです」
「同じくです」
殆ど全ての者が言ったのだった。松永は危険だとだ。
例え天下の茶器が目の前にあってもだ。それでもだというのだ。
しかし信長はその茶器を見てだ。こう
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