第七十六話 九十九茄子その二
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そして遂にだ。小姓の一人が部屋の中に入って来て信長に告げた。
「松永弾正様が来られました」
「うむ」
信長はいつもの調子で応えてだ。そのうえでだった。
松永の来訪を待つ。そして程なくしてだ。
松永と家臣達が来た。そのうえでだ。
彼等は松永を筆頭にして信長の前に控え一礼した。その彼等を見てからだ。
信長はだ。松永に対して言ったのった。
「顔をあげい」
「はい、それでは」
こうしてだ。松永は顔をあげた。信長はその彼の顔を見て言うのだった。
「ふむ。見たところじゃ」
「何でございましょう」
「そこまで悪辣には見えぬのう」
松永のその顔を見ての話だった。
「御主が三好を衰えさせ公方様を殺し」
そしてだった。
「大仏を焼いたのじゃな」
「その通りでございます」
松永も答える。悪びれず、いや何も動じた様子はない。
そしてその物腰でだ。彼は言うのだった。
「それがしがしました」
「全てじゃな」
「左様です。その通りです」
「してその御主がわしの前に来た」
信長はさらに言う。
「それは何故じゃ」
「それがしはこれより織田信長様の家臣にして頂きたいのです」
「わしのか」
「はい、そうです」
こう信長に返す松永だった。
「そうさせて頂く参上しました」
「わしは足利義昭様を奉じておる」
信長は答えなかった。松永の左右の織田家の家臣達は誰もが顔を顰めさせている。
そしてだ。こう囁き合うのだった。
「よくもまあ言ったものじゃ」
「殿にお仕えしたいだろ」
「信じれる筈がなかろう」
「蠍を傍に置いておけが恐ろしいことになるわ」
「やはりここでじゃ」
「この男は」
柴田に前田、それに佐々といった面々がだ。それぞれ目配せをしてからだ。
そのうえでだ。動こうと身構える。正座のままにしてもだ。
そして佐久間や林は素早く信長の前に出て松永が信長に仕掛けてくれば楯になろうとしていた。滝川や蜂須賀も今まさにだ。攻撃を仕掛けようとしていた。
緊張の空気がさらに高まる。しかしだった。
信長はその彼等にだ。笑って言った。
「まあ待て。この者はまだ話しておるぞ」
「しかし殿、やはりこの男はです」
「またとんでもないことを言っております」
「殿にお仕えしたいなどと」
「その様なことを」
松永のそのふてぶてしいとしか思えない言葉にだ。彼等はだ。
嫌悪を感じてだ。そして言葉を出していたのだ。
「その様なことできる筈がありません」
「先の公方様を殺した男ですぞ」
そして信長はその義輝の弟である義昭を奉じている。それならばだった。
「公方様も御気を悪くされましょう」
「放っておいてはいけません」
「絶対にです」
「だから待つのじゃ。確かにこの男は悪であろ
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