第三話 見てしまったものその十二
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「帰るか」
「そうされますね」
「ああ。あんたはどうするんだい?」
「私ですか」
「そうだよ。あんたは」
「同じです」
そうだとだ。声は中田に答えたのだった。
「これまでと同じです」
「じゃああれか」
「消えます」
「消えるのか」
「このまま」
「何かいつも素っ気無いな」
こう声に言う中田だった。
「あんたはそれでいいんだな」
「はい、私は」
そうだとだ。また言う声だった。
そしてだ。そのうえでだった。
声は今度はこんなことを言ってきた。
「それでなのですが」
「それで?」
「先程の彼ですが」
「ああ、あの高校生か」
「おわかりですね」
中田に対して。静かに問う言葉だった。
「あの彼もまた」
「剣士か」
「そうです。彼は水の剣士です」
「水な。じゃあ俺と逆か」
「はい、中田さんは火ですから」
そこがだ。まさに正反対だった。
「そうなりますね」
「水か。じゃああいつとは」
「戦う運命にあります」
「だよな。闘うんだよな、剣士とは」
「そして最後に残るのは」
「一人か」
中田はここで考える目になった。
「一人だよな」
「はい、一人です」
「そうなるよな。じゃあ」
中田は釈然としない顔になって。そうしてだ。
首を捻ってだ。こんなことを言った。
「やるしかないか」
「戦われますね」
「ああ。剣士に勝てば」
「はい、もらえるお金はかなりのものです」
「そうだよな。妖怪倒すよりもな」
「遥かに多いです。さらに」
そしてなのだった。さらにだった。
「最後の一人になれば」
「願いは思うがままか」
「それで何を望まれますか?」
「金は闘って得られるしな」
その問題はそれで解決できるというのだ。
しかしだ。その他にはだった。
「けれど人間と戦うのはな」
「お嫌ですか?」
「どうもな。好きになれないな」
中田は少し皮肉な感じの笑みになって話した。
「人間が相手だとな」
「そうですか」
「仕方ないな」
また言う彼だった。
「最後の一人にならないと終わらないんだよな」
「終わらなければです」
「戦いはずっと続くんだよな」
「その通りです。ですから」
「仕方ないな。やるか」
「御願いします」
「しかし。それにしても」
中田はここでまた言った。
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