第三話 見てしまったものその十一
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首を捻りそのうえでだ。現実であることを確め合った。
そしてだった。二人でだ。
その場を去ろうとした。しかしだった。
ここでだ。また出て来た者がいた。それは。
中田だった。彼は上城の姿を見てだ。こう言ったのだった。
「あれっ、あんた確か」
「あっ、貴方は」
「ああ、中田さ」
自分からだ。笑顔で言う彼だった。
「八条大学のな」
「そうですよね。剣道部の」
「何でここにいるんだい?デートかい?」
「ええ、まあ」
その通りだとだ。上城は事実を隠して応えた。
「そうですけれど」
「そうかい。デートもいいけれどな」
中田は上城のその話に特に何も思うところなくだ。それでだった。
彼と樹里にだ。こう言ったのだ。
「あんたにそこのお嬢ちゃんもな」
「私もですか」
「そう、あんたもだよ」
樹里に対しても言うのだった。
「夜道は何かと物騒だからな。早く帰れよ」
「そうですね。最近変な人が多いっていいますし」
「だからですね」
「ああ、だからな」
それでだとだ。中田は笑って述べた。
そしてそのうえでだ。こんなことも言ったのだった。
「食われないようにな」
「いえ、流石にそれは」
「ないですよ」
二人は食べられるという言葉にはすぐに突っ込みを入れた。
「人が人を食うって」
「そういうのはちょっと」
「ないですよ」
「どう考えても」
「おっと、そうだな」
中田もだ。自分で言いはしたがそれはすぐに否定したのだった。
「人間は人間を食わないよな」
「確かにそうした話もありますけれど」
「それでもちょっと」
「現実的な話じゃないですよ」
「夢みたいな」
二人は無意識のうちに先程のスフィンクスとの話を思い出しながら述べた。
「まるで化け物が出たみたいな」
「そんな話ですね」
「じゃあ化け物でいいな」
中田は屈託のない、如何にも裏がなさそうな笑みで返した。
「とにかくな。化け物に食われないようにな」
「早く帰る」
「そうするべきですね」
「ああ、そうしろ」
中田はまた二人に言った。
「早いうちにな」
「わかりました」
「確かに夜遅くはいけないですし」
真面目な二人も頷いてだ。それでだった。
中田と別れ帰路に着く。その二人を見届けてからだ。
中田は周囲を見回しだ。そのうえでだ。
誰かにだ。こう尋ねたのである。
「もういないのかい?」
「はい、もう消えたようです」
「そうなのか。じゃあ仕方ないな」
話を聞いてすぐに頷く彼だった。
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