第七十五話 都に入りその六
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「泰平の世があるのです」
「最早戦のない」
「それがあります」
「左様ですか。夢の様ですな」
和田もだ。その言葉がだ。
かなり恍惚となっている。そのうえでの話だった。
そしてだ。細川もだ。信じられないといった顔で述べるのだった。
「乱世が終わりますか」
「左様です」
明智はその細川にも答える。
「そうなります」
「まずは一際乱れていた近畿が」
「はい、穏やかになります」
「よいことですな。織田殿は手に入れられた国を隅々まで丁寧に治められますし」
この辺りは信玄と同じだ。彼も政が第一なのだ。
それ故にだ。細川もこう言えたのだった。
「天下にとってよいことです」
「ではその織田殿の御前に今から」
「はい、参りましょう」
「そして共に戦いましょうぞ」
細川と和田は明智の言葉に頷きだ。そのうえでだ。
彼等は信長のいる本能寺に向かった。寺には既にだ。
信長は家臣達を集めていた。その彼等を置いたうえでだ。家康と長政に述べていたのだった。
二人は今信長の前に控え頭を下げている。彼はその二人に笑みを浮かべていた。
そしてその笑顔でだ。こう二人に告げたのである。
「この度の上洛によく共に来てくれた」
「いえ、我々も都まで来させてもらいましたし」
「有り難いことでした」
二人は頭を上げてその信長に応えて言う。
「ですからお礼なぞはです」
「勿体ないことです」
「ははは、そう言うな。礼を言うぞ」
このことはしっかりと述べる信長だった。律儀と言えば律儀だ。
そしてそのうえでだ。二人にこうも告げたのである。
「で、その礼の証じゃが」
「はい、ここに」
「用意しております」
信長の言葉に応えて大津と野々村がだ。茶器や砂金が入った袋、それに珍しい品々を出してきた。それを台の上に置いて二人の前に置いた。
そういったものが二人の前に置かれてからだ。また言う信長だった。
「ではこれをじゃ」
「頂けるのですか」
「これ程のものを」
「うむ、兵達にも餅と酒を用意してある」
彼等への礼も忘れない。信長は実にわかっていた。
「思う存分喰らってそのうえで国に帰るがいい」
「有り難きお言葉、それでは」
「謹んでお受け致します」
こうしてだ。謝礼に餅と酒を家康と長政、それに彼等の兵達に贈りだ。信長は彼等と別れた。そのうえで織田家の者達だけになったところでだ。明智達が来たのだ。
信長はその彼等を見てだ。今度はこう言った。
「おお、来てくれたか」
「遅れて申し訳ありません」
「いや、丁度よい頃じゃ」
彼らに対しても笑顔で返す信長だった。そしてだ。
彼等にだ。こう告げたのだった。
「では空いている席に座るのじゃ」
「はい、それでは」
「御言葉に甘えまして」
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