第七十五話 都に入りその四
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「我等も無事では済みませぬ」
「そうでなくともあの山は険しい」
延暦寺のある比叡山、そこはだというのだ。
「迂闊に攻めては行かれぬ」
「聖地と言われるだけはありますな」
「そうじゃ。しかし聖地と言うのにはのう」
どうかと。かなりいぶかしむ顔でだった。
信長は首を捻りだ。そして言ったのだった。
「あの山はあまりにもじゃ」
「はい、政に携わっているせいでしょうか」
「あれものう。僧には学識がある」
信長自身も沢彦といった高僧から知恵を借りることが多い。彼等を無下に否定はしていない。
そのうえでだ。こう言うのだった。
「政で知恵を出すのも当然じゃ」
「それ自体はですな」
「しかしそろそろそれを終わりにすべきじゃな」
「僧が政に携わることは」
「うむ、だから延暦寺もああなったのじゃ」
「そして多くの寺社が」
「だからじゃ。今後は分けるべきじゃな」
信長は実際にそうして政をやってきている。尾張でも美濃でもそうしているのだ。
それでだ。彼は今も言うのだった。
「まあ延暦寺ともやがてはな」
「はい、今でなくとも」
こうした話もした。そうしてだった。
信長率いる織田の軍勢は都に入り義昭をそこに入れた。かくしてだ。
都に入った義昭は大喜びでだ。仮の御所としている寺でだ。こんなことを言うのだった。
「いや、ではじゃ」
「はい、それではですな」
「間も無く」
「うむ、将軍就任の式を挙げねばな」
こう細川と明智に述べたのである。
「是非共のう」
「いえ、今はです」
「もう少しお待ち下さい」
だが、だった。二人はだ。
「織田殿はまだ三好と戦をしなけばなりませぬ」
「すぐに摂津の方に行かれます」
「何と、上洛は果たしたというのにか」
義昭はそこまでしか考えていない。それでだ。
彼等のその話にだ。目を丸くさせてそうして言ったのである。
「まだ戦をするのか」
「丹波の波多野氏も三好に与しております」
明智は山城の北西に位置するその国の話をした。
「あの者達もおりますし播磨も気になるところです」
「そして大和にはです」
細川はその国の話をした。
「あの者がおりますし」
「松永じゃな」
「左様です。しかも伊賀には六角がいます」
「何じゃ、では四方敵だらけではないか」
義昭は細川にも言われだ。それでだった。
これまた目を丸くさせてだ。立ち上がりそうになる程興奮して述べたのだった。
「何時都を攻められるかわからんではないか」
「だからこそです」
それ故にだとだ。述べる明智だった。
「我等も出陣せねばなりませぬし」
「では式はか」
「暫しお待ち下さい」
「ううむ、余はここに留まったままか」
義昭はこれまた残念そうに述べる。
「難儀なこと
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ