第三話 見てしまったものその八
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「それが大事だと思うけれど」
「そうね。じゃあ私も」
「そのままでいいよね」
「うん、そうね」
笑顔で上城に応えた。そしてだった。
そんな話をして楽しく下校のデートを楽しんでいた。しかしだ。
急にだ。二人の前にだ。
突然青黒い煙が出て来て。そうして。
翼を生やした女が出て来た。その女は。
獅子の身体を持っている。乳房は人間の女だがそうした姿だった。その姿の異形の女が出て来てだ。上城に対して言ってきたのだった。
「水ね」
「水!?」
「水の剣士」
こう彼に言うのだった。
「出て来たのね」
「出て来たって何が」
「水も出て来たとなると」
だが、だった。女は。
自分だけで言葉を続けていく。そしてだった。
「面白いわね」
こうも言ったのである。
「これはね」
「面白いって。だから何が」
「相手にして」
どうかというのだ。
「不足はないわね」
「これってまさか」
ここでだ。樹里がその女、翼を生やし獅子の身体のその女を見て言った。
「あれよ。スフィンクスよ」
「スフィンクス?」
「そう、あれよ」
こう彼に話すのである。
「そのままの姿じゃない」
「えっ、けれどスフィンクスって」
上城は驚いた顔で樹里に応えた。
「あれじゃない。男の人の頭に」
「それでライオンの身体っていうのよね」
「そうじゃないの?」
「あれはエジプトのスフィンクスだから」
また違うというのだ。
「またね。違うのよ」
「そうなんだ」
「ギリシアのスフィンクスはまた違うの」
「ううん、そうだったんだ」
「そうよ。ギリシアのスフィンクスは」
「今目の前にいる」
それなのかとだ。上城は樹里に尋ねた。
「そうだったんだ」
「ほら、朝は四本で」
樹里は今度はこの話をはじめた。
「昼は二本で」
「夜は三本だよね」
「それで歩く生き物は何かっていう謎々だけれど」
「あれだったんだ」
「そう、それを言うスフィンクスがね」
それがだというのだ。
「今目の前にいる」
「このスフィンクスなんだ」
「そう。ギリシア神話のスフィンクスなのよ」
こう樹里は話す。その話を受けてだ。
上城はスフィンクス、その異形の女を見てだ。こう言った。
「じゃあここでも?」
「悪いけれどそれはもうしないわ」
スフィンクスは剣呑な調子でそれは否定した。
「もうね」
「謎々はしないんだ」
「闘いよ」
それをするというのだ。
「それをするわ」
「闘いって」
「さあ、早く出しなさい」
上城を見据えて言い返す。
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