暁 〜小説投稿サイト〜
木の葉芽吹きて大樹為す
青葉時代・終末の谷編<前編>
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
込んだ。

*****

 その手の動きを例えるのであれば、それは愛おしむ様な手つきだった。
 今にも壊れてしまいそうな儚い物を触れる様に、つい先程咲いたばかりの花弁を慈しむ様に――そっとマダラの手が首をなぞる。

 優しい、優しすぎる手つき――だからこそ、触れられた箇所から鳥肌が立った。

「――……柱間」

 睦言を呟く様に甘く、聞くだけで痺れを齎す様な、そんな声。
 しかしながら今にも蕩け出しそうな声音を耳にした途端、私の全身が恐怖した。

 そして背筋が凍ったその瞬間、私の首はマダラの剛力で一気に絞め上げられた。

「――……っあ! は、放し……やが、れっ!!」
「…………」

 それまで難なく喉を通って肺を満たしていた酸素が突然途絶え、視界が赤く明滅しだす。
 嫌な音が口より零れ、私は何とかして呼吸をしようと無様かつ必死に喘ぐしかない。

「っくふ! う、うぁあっ」

 爪でマダラの両手を引っ掻き、私の首を覆う両手を引離そうと、押しのけようとするも意味を為さない。
 マダラの力が増して、私の首に指が食い込んでいく。

 ――男と女の力の差がここではっきりと出てしまった。

 チャクラを操るだけの余裕が持てない私では、力ずくで自分を解放する事が出来ない。
 無意味な抵抗をして、なんとかして死を回避しようと足掻く――息苦しさに目尻に涙が浮かんで、そのまま頬を伝って地へ落ちた。

「――貴様は覚えているのか、千手柱間? オレ達が初めて出会った時の事を」

 何かをマダラが呟いているが、聞き取って理解するだけの余裕はない。

 脳が酸素を求めて必死に警報を鳴らし、なんとかしてそれを達成しようともがき続ける。
 足が地を蹴ったところで、軽く地が削られただけだ。

「どうせ、貴様は覚えていないだろうな」

 目元に涙を浮かべながらも、それでも私を見下ろすマダラを睨み返す。
 死に瀕した人間特有の必死さを浮かべた私の顔を見つめて、何を思ったのかマダラが軽く微笑む。

 暗く翳りの有る微笑みは、かつての彼が浮かべていた物とは全く違う物だ。

「――前とは完全に位置が逆転したな。オレは貴様に見下ろされ、ただ呆然としていた」

 愉しそうなマダラの顔を睨んで、必死で辺りに手を這わせる。
 左手でマダラの両手に抵抗しながら、右手で地面の上を探れば――固くて冷たい物にその指先が触れた。

「あの時はイズナがいたが、今はオレと貴様だけだ。……思えば随分と遠くへ来たものだな」
「っひゅ、ぐ……っ!」

 視界が赤から白へと変わる。

「あの時、オレ達を助けなければ貴様の父が死ぬ事も、この様な事も起きなかったものを。――結局の所、貴様は貴様自身の甘さに殺される」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ