青葉時代・終末の谷編<前編>
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込んだ。
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その手の動きを例えるのであれば、それは愛おしむ様な手つきだった。
今にも壊れてしまいそうな儚い物を触れる様に、つい先程咲いたばかりの花弁を慈しむ様に――そっとマダラの手が首をなぞる。
優しい、優しすぎる手つき――だからこそ、触れられた箇所から鳥肌が立った。
「――……柱間」
睦言を呟く様に甘く、聞くだけで痺れを齎す様な、そんな声。
しかしながら今にも蕩け出しそうな声音を耳にした途端、私の全身が恐怖した。
そして背筋が凍ったその瞬間、私の首はマダラの剛力で一気に絞め上げられた。
「――……っあ! は、放し……やが、れっ!!」
「…………」
それまで難なく喉を通って肺を満たしていた酸素が突然途絶え、視界が赤く明滅しだす。
嫌な音が口より零れ、私は何とかして呼吸をしようと無様かつ必死に喘ぐしかない。
「っくふ! う、うぁあっ」
爪でマダラの両手を引っ掻き、私の首を覆う両手を引離そうと、押しのけようとするも意味を為さない。
マダラの力が増して、私の首に指が食い込んでいく。
――男と女の力の差がここではっきりと出てしまった。
チャクラを操るだけの余裕が持てない私では、力ずくで自分を解放する事が出来ない。
無意味な抵抗をして、なんとかして死を回避しようと足掻く――息苦しさに目尻に涙が浮かんで、そのまま頬を伝って地へ落ちた。
「――貴様は覚えているのか、千手柱間? オレ達が初めて出会った時の事を」
何かをマダラが呟いているが、聞き取って理解するだけの余裕はない。
脳が酸素を求めて必死に警報を鳴らし、なんとかしてそれを達成しようともがき続ける。
足が地を蹴ったところで、軽く地が削られただけだ。
「どうせ、貴様は覚えていないだろうな」
目元に涙を浮かべながらも、それでも私を見下ろすマダラを睨み返す。
死に瀕した人間特有の必死さを浮かべた私の顔を見つめて、何を思ったのかマダラが軽く微笑む。
暗く翳りの有る微笑みは、かつての彼が浮かべていた物とは全く違う物だ。
「――前とは完全に位置が逆転したな。オレは貴様に見下ろされ、ただ呆然としていた」
愉しそうなマダラの顔を睨んで、必死で辺りに手を這わせる。
左手でマダラの両手に抵抗しながら、右手で地面の上を探れば――固くて冷たい物にその指先が触れた。
「あの時はイズナがいたが、今はオレと貴様だけだ。……思えば随分と遠くへ来たものだな」
「っひゅ、ぐ……っ!」
視界が赤から白へと変わる。
「あの時、オレ達を助けなければ貴様の父が死ぬ事も、この様な事も起きなかったものを。――結局の所、貴様は貴様自身の甘さに殺される」
「
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