第七十四話 都の東でその十一
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明智はだ。その采配を振り下ろしたのだった。
「よし、撃て!」
この言葉と共にだ。鉄砲が一斉に放たれる。それを受けてだ。
三好の兵達がもんどりうって倒れてだ。軍全体がその動きを止めた。その止めたところにだ。
すぐにだ。明智は命じたのだった。
「もう一段、撃て!」
「はっ!」
明智の指示通りだ。後ろに控えていたもう一段が撃つ。これでだった。
三好の軍勢はその無謀な突撃を止めてしまった。それを見てだ。
全体を見る信長もだ。全軍に命じたのだった。
「よし、左右から囲め!」
「畏まりました!」
「では!」
「右は権六、左は牛助じゃ!」
柴田と佐久間にだ。それぞれ両翼の指揮を命じたのである。
そしてだ。中央はだった。
傍らにいる丹羽と滝川にだ。こう命じたのだった。
「右は五郎左、左は久助じゃ」
「そして殿は真ん中に」
「そこにつかれますか」
「わしが扇の要となる」
敵を囲むだ。それになるというのだ。
信長はこう告げてだ。あらためてだ。
自ら馬を駆りだ。こう全軍に命じた。
「このまま囲め!忠三郎の隊は反転しやり返せ!」
「はっ、それでは!」
「今より!」
こうしてだ。信長の指示が伝えられ瞬く間にだ。織田軍は動いた。
青い軍勢がまさに一つの生きものの如く動きだ。動きを止めた三好の軍勢を半月状に取り囲む。そうしてそれからだった。
織田の軍勢はだ。長槍を高々と掲げてだ。
上から三好の者達を何度も叩きだ。彼等の槍が届かない場所から攻めてだ。
彼等を崩しだ。そこからだ。
激しく攻め立てる。蒲生の騎馬隊も攻める。圧倒的な兵力で彼等を一気に押し潰さんとする。
その攻撃を受けてだ。三好の軍勢はだ。
瞬く間に多くの兵が倒れだ。残る兵達も狼狽してだ。
すぐに後ろ、川の方に向けて逃げ去る。その統御にあたる筈の三人衆もだ。
ここでも狼狽しきりだ。こう言う始末だった。
「こ、これはいかん!」
「逃げよ!摂津まで退け!」
「これ以上の戦は無理じゃ!」
何とか将の務めとして後詰は務める。しかしだ。
その彼等にしても織田軍の追撃から何とか逃げるのが精一杯だった。三好軍はまさに壊走状態で逃げ出していく。そうしてそのまま都のある山城からも逃げた。
織田軍は彼等を川の東岸まで追った。しかしだ。
川を渡る彼等にはだった。信長がこう命じたのだった。
「弓矢や鉄砲で射る程にしておけ」
「では追わないのですか」
「それだけなのですか」
「そうじゃ。それだけでよい」
積極的には追うなというのだ。これが信長の今の命令だった。
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