第七十四話 都の東でその二
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「いよいよじゃな」
「織田家が都に入る」
「遂に」
「うむ、ではじゃ」
ここでだ。また言う信長だった。
「都に入るまでにじゃ。軍律は引き締める。
「そしてそれからもですな」
「都に入られてからも」
「とにかく教えそれを徹底させる」
そのうえで軍規軍律を維持するというのだ。
「一銭、一糸といえどもじゃ」
「全くですか」
「盗みはしない」
「何一つとして」
「無論悪戯もさせぬ」
これもだ。信長は当然だと言った。
「恥ずかしい真似はするなということじゃ」
「はっ。それではです」
「その様に」
弟達も応える。
「軍規軍律はこのままですな」
「厳しさを保たれますか」
「乱れた兵なぞいらぬ」
信長は言い捨てる様にして述べた。
「兵は弱くとも規則正しければそれでよいのじゃ」
「弱くともですか」
「無論強いに越したことはない」
このことは信長もそうであって欲しいことだった。何しろ織田の兵の弱さは天下に鳴り響いている。このことについては信長自身もどうにかしたいと思っていたのだ。
だがそれでもだ。強くなければだというのだ。
「しかし弱いのはまだ我慢できるのじゃ」
「それよりも規則正しくですか」
「規則を守ることですな」
「左様じゃ。それが第一であり絶対じゃ」
強い声で言うのだった。弟達に対して。
「さもないとどうにもならぬわ」
「では。織田の兵はまずはですか」
「規律を保たれますか」
「兵は兵じゃ。戦をするものじゃ」
信長は己の考えをここでも話す。
「乱暴狼藉をするものではないわ」
「畏まりました。それではです」
弟達を代表してだ。信行が応えた。
「都においてもその様に」
「そうせよ。絶対にじゃ」
「では」
「さて、では都に入る前にじゃ」
信長は規律から話を変えた。今度の話は。
「一戦あるのう」
「ですな。三好ですな」
信広がここで言った。
「三人衆、そして」
「そうじゃ。松永じゃ」
「松永弾正でございますか」
信広が彼について曇った顔で言うとだ。信行もだった。
難しい顔でだ。兄に言うのだった。
「兄上。お言葉ですがやはり」
「あの男はというのじゃな」
「捕まえれば即座にです」
信行は彼にしては珍しく厳しいことを述べた。
「斬るべきです」
「それがしもそう思います」
そしてだ。信広も言うのだった。
「勘十郎兄上と同じくです」
「松永は斬れというのじゃな」
「はい」
まさにだ。その通りだというのだ。
「そうすべきかと」
「誰もがそう言うのう」
「仕方ありませぬ、いえ」
言いながらだ。信広は己の言葉を訂正させた。
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