第七十四話 都の東でその一
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第七十四話 都の東で
近江の南を掌握した織田の軍勢は都に向かっていた。その道中でだ。
義昭がだ。ひょっこりと出て来てだ。そのうえで信長に問うたのだった。
「よいか?」
「はい、何でしょうか」
馬に乗っている信長に急に声をかけてきたのだ。それに応えてだ。
信長は落ち着いた声でだ。義昭に言ったのだった。
「都のことでございますか」
「そうじゃ。都に入ればどうするのか」
「まずは都を安んじます
それをだ。賽所にするというのだ。
「全てはそれからです」
「では都に入ってもか」
「左様です、すぐに公方様にはなれませぬ」
「難儀じゃのう、それはまた」
「まずはです」
義昭が何をするべきかも言う信長だった。
「御待ち下さい
「待てと申すか」
「今はそこからです」
だからこそだ。待てと述べる信長だった。
「時は義昭様のものですから」
「余のものか」
「その中で少しずつです」
「少しずつかは」
鞍に座ったままで述べる彼だった。
「よくなるというの」
「左用です。では今はです」
「今はとは」
「後ろでゆっくりと為されて下さい」
醜さもだ。ゆっくりと休めばだというのだ。
「戦はそれがし達にお任せ下さい」
「わかった。それではじゃ」
「全てが信長に」
「わかった。それではじゃ」
義昭もだ。ここまで聞いてだった。
後ろに下がった。その彼を見送ってからだ。
信長は傍らで馬に乗っている信行に顔を向けて話してきた。
「どう思うか」
「義昭様のことでございますか」
「そうじゃ。御主はどう思うか」
「香等については何も思いませぬ」
それも修業だというのだ。
「ただ。それでもです」
「あの方はか」
「劣等感が強い方です」
このことはもうだ。信行も見抜いていた。
「そしてそれがそのまま鏡返しになり」
「ああなったというのじゃな」
「左様です」
こう返す信行だった。
そしてだ。こうも言うのだった。
「ですから用心時が必要かと」
「そうじゃな。では向かうとするか」
「はい、色々とです」
「そうましょう」
「全てはそれからかと」
信行以外の男達からも声があがる、信長の弟達だ。
その彼等を代表してだ。信広が言ってきた。
「殿、米ですな」
「米と申すか、わしが」
「左様です、米です」
またこう言う信広だった。
「米を大事にされて下さい」
「飯か」
「それに金です」
それもあるというのだ。
「その二つになりますから」
「わかっておるが。しかしか」
「今以上に」
「言われてみればそうじゃ。ではじゃ」
ここはだ。どうするかと言ってだった。
「金のことも怠らずにじゃ」
「そのうえで次の戦
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