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久遠の神話
第三十五話 止める為の戦いその九
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うえでこう上城に言うのだった。
「特に何も」
「?ないんですか?」
「はい、そうです」
 こう返してきたのだった。
「そうなのです」
「一体何かと思ったんですが」
「そうですか。とにかく彼ですが」 
 声は必要なことは喋らない。そのかわりにだ。
「彼もまた剣士なのです」
「そうですか」
「おわかりになられましたね」
「はい」
 顔を暗くさせてだ。上城は答えた。
「そのことは」
「ではいいです」
「ですがそれにしても」
 暗い顔のままでだ。また言う上城だった。
「剣士は色々な人がいるのですね」
「剣士の数だけです」
 いるとだ。答える声だった。
「存在しています」
「そうなのですね。では」
「あの剣士とはどうされますか」
「止めたいです」
 戦いを止めることを決意した、それならだった。
「絶対に。戦ってでも」
「その強さはかなりのものです」
 加藤の強さについてもだ。声は言ってきた。
「そのことはおわかりになられていますね」
「ええ、それは」
 よくとだ。上城も答える。
「わかっているつもりです」
「それでもですね」
「僕は決めましたから」
 戦う為に戦う、そうすると決めたからだというのだ。
「戦います、あの人とも」
「わかりました。ですが」
「ですが?」
「戦いは予定通り進みます」
 声は上城の声を否定する様に言ってきた。
「そうなりますので」
「予定通り?」
「そうです。この戦いで遂に」
 声の調子が僅かだが上ずっていた。まるでそこに希望がある様に。
 そしてその声でだ。こう上城に言ったのである。
「私の望みが適うのですから」
「望み?それは一体」
「貴方には関係ないことです」
 声は上城にその望みは言わなかった。
「ですから言いはしません」
「そうですか」
「ではまた会いましょう」
 己のことは話さずにだ。そしてだった。
 声は上城のところからその気配を消した、そのうえでだった。
 一人になった彼もその場を後にした。そうしたのだった。


第三十五話   完


                    2012・5・31

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