第七十三話 近江掌握その九
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信長もだ。確かな声で応えた。
「左様か。大谷吉継というのか」
「智勇兼備、かなりの者と聞いております」
「我が家には人は一人でも多く必要じゃ」
信長はここでこうも言った。
「ならばその大谷という者にも会おう」
「ではそうされますか」
「そうする。楽しみがまた一つ増えたわ」
信長の笑みがさらに楽しげなものになる。その笑みでだった。
あらためてだ。こう言ったのである。
「では二日あるがじゃ」
「その二日の間にですか」
「蒲生、及び大谷とですか」
「会われますか」
「そうするとしよう。丁度よい休みになるのう」
信長にとって休みはそうしたものだった。疲れを知らぬところがここでも出た。
そうした話をしつつ茶を飲みだ。彼は機嫌をさらによくさせる。
そしてだった。二日休むのだった。六角の戦に鮮やかに勝ったことはすぐに諸大名にも伝わった。信玄はそのことを聞きだ。こう家臣達に述べるのだった。
「見事よのう」
「あの観音寺城もあっさりとですか」
「陥としたとは」
「そこまで出来るのは一人では無理じゃ」
信玄は人を見て言うのだった。
「到底じゃ」
「では家臣をですか」
「家臣達を上手に使いですか」
「そして勝ったのですか」
「人は城じゃ」
これが信玄の言葉だった。98
「しかしその城を上手く使える者とそうではない者がおる」
「そして織田信長はですか」
「使える者ですか」
「斎藤龍興はそもそも城がわかっておらなんだ」
人は城、その概念自体がだというのだ。
「だからああなったのじゃ」
「城、即ち国を失った」
「そうなったというのですか」
「どの様な堅固な城も人が築きじゃ」
そしてだというのだ。
「人が護るものじゃ」
「だからですか」
「人がいなければなのですか」
「そういうことじゃ」
これが信玄の言いたいことだった。そして実際にだ。
彼はだ。また言うのだった。
「織田信長はやはりわかっておるわ」
「そしてその織田信長がです」
「今まさに都に迫っています」
「このまま都を手に入れるかと」
「そして公方様も」
「義昭様を公方にじゃな」
このことになるとだ。信玄はだ。
顔を曇らせてだ。こう言うのだった。
「あの方はどうも難儀な方じゃな」
「どういった方でしょうか」
内藤が信玄に問うた。義昭について。
「申し訳ありませんが先の公方様のことは存じていますが」
「義昭様のことは知らぬか」
「はい、どういった方なのでしょうか」
「誇り高くそして大人しい方ではない」
それが義昭だとだ。信玄は言うのだった。
「わしも少し聞いただけじゃが随分問題のある方じゃ」
「そしてその方をですか」
「織田信長は擁立するのですか」
「公方様として」
「
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