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戦国異伝
第七十三話 近江掌握その五
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 観音寺城の中に入り蜂須賀、そして飛騨者達と合流して彼等に声をかけた。
「よくやったぞ!」
「おお、権六殿!」
「来られましたか!」
「うむ、こうしてな!」
 来たとだ。柴田は大きく明るい声で彼等に応える。そしてそのうえでだ。
 己の兵達にも顔を向けてだ。そして告げるのだった。
「目指すは本丸、よいな!」
「では今よりですな」
「城を一気に」
「そうじゃ。攻め落とすのじゃ」
 まさにそうするとだ。命じてだった。
 彼とその兵達は城の中をどんどん入って行く。その後にだ。
 織田の兵達が続く。戦局はこれで決まった。
 織田の軍勢が城の中に雪崩れ込んで来たと聞いてだ。六角はだ。
 本丸においてだ。報告してきた家臣に思わずこう問い返したのだった。
「馬鹿な、あの裏門をか」
「はい、あの場所の城壁を登りです」
「そして城の中に入ったと申すか」
「忍の者達を使いです」
「あの城壁は並の忍では登るだけでの一苦労じゃ」 
 ましてやだ。登った先にいる兵達に勝てるかどうかというのだ。
「それでなのか」
「はい、そうです」
「兵達を倒し門を開けたというのか」
「信じられぬことに」
「何ということじゃ」
 六角はここまで聞いてだ。思わず腰を抜かした。
 この時彼は己が正座であることに安堵した。正座でなければ腰を抜かしたことがわかりそれで恥を晒すことになったからだ。それでなのだった。
 そのことに安堵はしたがそれでもだった。城の現状にはだ。
 絶望的な状況であることを感じながらだ。報告した家臣に問うたのだった。
「それでじゃ。敵は何処まで来ておる」
「二の丸に既に」
「もうそこまで来ておるのか」
「既に万は入っております」
 兵の数も伝えられる。
「そして兵達も次々と降るか討ち取られています」
「左様か」
「はい、このままでは本丸も」
 ここまで聞いてだ。六角はだ。
 その苦い顔でだ。こう周りにいる家臣達に告げたのだった。
「残っている兵達は本丸に集めよ」
「はい、今すぐに」
「そして本丸の守りを」
「そうするしかあるまい」
 顔にある苦さがだ。さらに深まった。
 そしてそのうえでだ。彼は言うのだった。
「最後の最後じゃ」
「はい、それでは今より」
「最後の戦をしましょう」
 家臣達も覚悟を決めた。しかしだった。
 ここで別の家臣達が入って来てだ。そのうえでだった。
 六角に対してだ。こう告げたのである。
「殿、織田から話が来ております」
「話とな」
「はい、最早戦の趨勢は決したと」
 そしてだというのだ。
「だからこそ」
「降伏せよというのか」
「さすれば命は問わぬと」
 こう言ってきているというのだ。織田がだ。
「城を明け渡す様にと」
「左様か」
 
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