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久遠の神話
第三十四話 戦闘狂その十一

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「やっぱり」
「そうかも知れないな。しかしだ」
「しかし?」
「どうする。その答えは」
 それはだ。どうかというのだ。
「君が出すことだ」
「僕がですか」
「戦いを止める為に何をするかはだ」
 それはだ。上城自身が決めることだというのだ。
「君自身で考えて決めることだ」
「そうなんですね」
「俺達は戦う。そうして」
「戦いを止めるよ」
 工藤に続いて高橋も上城に言ってきた。
「それが俺達の選択だ」
「けれどそれはあくまで俺達のものだから」
 上城のものではない、そうだというのだ。
「君は君自身でだ」
「考えるといいよ」
「わかりました」
 二人の言葉を受けたという意味での返事だった。
 その返事を返してからだ。上城は自分の後ろに置いて守っている樹里にこう告げた。
「じゃあ村山さんは」
「逃げろっていうのね」
「そう。安全な場所までね」
「私。考えたの」
 悩んだが決意した顔でだ。樹里は俯きながらも彼に答えてきた。その顔には迷いはなかった。最初は悩んでいたがそれを吹っ切った顔だった。
「今の戦いはね」
「観るんだ」
「ええ。工藤さんと高橋さんの決意をね」
 それを見るというのだ。
「そうしたいの」
「そうなんだ。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「村山さんはここにいて」  
 彼女を後ろに護ったまま、こう言ってだった。
 上城は剣を出した。彼の水の刀を。
 それを一刀流の構えで持ち。そして言ったのである。
「僕が護るから」
「戦うの?」
「戦うかそれ以前のことだよ」
「戦う以前っていうと」
「護るから。村山さんを」
 そうするとだ。彼も決意した顔で答えた。
「何があってもね」
「だから剣を抜いたのね」
「戦うかどうかはまだ決めていないけれど」 
 だがそれでもだというのだ。
「護るよ。村山さんはね」
「有り難う。それじゃあ」
「観よう。工藤さん達の戦いをね」
「戦いを止める為の戦いを」
「それをね」 
 話しながら高代が話してくれた抑止力としての力のことも思い出した。そうした話をしながら。
 上城は剣を構えて戦いを観るのだった。二人と加藤、彼の戦いを。


第三十四話   完


                  2012・5・23
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