第七話 位牌その七
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「芯は強いようだが。それでもこうしたことにはまだ弱いか」
「どうされますか、それで」
「気持ちはわかるが連れて来ぬ訳にもいくまい」
信行は少し苦い言葉で述べた。
「だからここはだ」
「わかりました、それでは」
「兄上が来られたら変わるだろう」
信行はこうも言うのであった。
「あれは兄上に一番懐いておるからな」
「ははは、兄上はもてますな」
ここで笑ったのは信広であった。
「よいことで」
「それが殿のいいところですな」
今言ったのは金森であった。
「おなごに慕われるのはいいことです」
「しかも市様とはこれまた」
森長可も言う。
「お美しい方に慕われるものよ」
「市様は必ず大層なおなごになられるぞ」
池田勝正もいる。
「天下に轟くまでのな」
「そうだな。そこまで美しい方になられるぞ」
坂井もそのことを認める。
「ご兄弟姉妹の中でも一番やもな」
「そうだな。その市だが」
また言う信行だった。
「兄上が来られるまでは私の傍に置いておこう」
「そうして頂けますか」
「市さまは」
「うむ、それではだ」
信行も家臣達の言葉に頷いてみせた。
「では行こう」
「さて。誰がいるか」
「織田信友めがいるでしょうな」
「まずあ奴が」
「坂井太膳も」
この者の名前も出た。
「いるでしょうが」
「我々としてはこのままですな」
「動ずることなく」
「その必要はない」
平手の今度の言葉は強かった。
「何も動じることはない」
「そうですね、我等の方が上です」
「ですから」
「負けると思うか」
平手は彼等にこうも問うてみせた。
「清洲の織田に。そしてその他の織田に」
「まさか」
「そんな筈がありません」
「どうして負けましょうか」
これが彼等の返答であった。
「坂井がいても一人です」
「しかし我等はその坂井よりも上です」
「それがこれだけいればです」
「負ける筈がありません」
「そういうことじゃ。負ける筈がない」
平手はまた話してみせた。
「殿にしてもな」
「織田信友にはです」
「負ける筈がないと思いますが」
「それは如何でしょうか」
「さてな」
しかしであった。平手は主のことになると首を捻るのであった。
「そうであればいいのだがのう」
「まあそれは平手殿の心配性ということで」
「それではです」
「参りましょう」
何はともあれ葬儀の場に入る一同だった。そこにはその清洲の織田信友やその腹心である坂井太膳もいた。そして他の織田の者達もだ。多くは信秀の敵でありこれから信長の敵となる者達であった。
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