第三十三話 八人目の剣士その十三
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しかし扉は開いてはいない。そこには誰もいなかった。
「店の前を通った。しかもこの気配は」
これまで会ってきた七人の剣士の誰のものでもなかった。つまりは。
「八人目。八人目の剣士が出て来た」
「どうしたんだい?」
聡美がカウンターの席から身体をよじって店の扉の方を見ていることにだ。マスターは尋ねた。
「急に後ろを振り向いたけれどね」
「いえ、別に」
「幽霊でもいたのかい?生憎この店にはそんなのはいないよ」
「そうですね。このお店にはいないですね」
「そうした話は嫌いだからしないでくれよ」
マスターは少し苦笑いになって聡美に述べた。
「どうもね。怪談とかはね」
「苦手ですか」
「うん、そうなんだよ」
「そうだったのですか」
「蜘蛛とか蛇は平気だけれどね」
そうした生理的嫌悪感を抱かせる生き物に対してはというのだ。
「けれどね」
「わかりました。では」
「そう、してくれなかったら助かるよ」
マスターはこう聡美に言った。
「そういうことでね」
「わかりました。では」
「そう。ギリシアのワインを楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
聡美は怪談ということにして話を終わらせた。だが、だった。
また一人剣士の影が現れた。そしてその影が実体になっていく。聡美はそのことを実感していた。後ろに感じた気配がそのことの何よりの証拠だった。
第三十三話 完
2012・5・15
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