第七十一話 羽柴秀吉その六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
しかしだ。六角はここでだ。釈然としない顔を見せた。そのうえでだ。
己の家臣達にだ。こう言ったのである。
「しかしじゃ」
「三好殿ですか」
「三人衆のお歴々ですな」
「松永殿もじゃがな」
彼の名も挙げるのだった。そのうえでのことだった。
「やがて成敗せねばな」
「はい、義輝様を殺しました」
「このことは決して忘れてはなりません」
「例え何があろうとも」
「その通りじゃ。何時かは成敗する」
三人衆も松永もだと。六角は険しい顔で家臣達に話す。
「公方様を殺めるとは。許せぬ」
「左様です。やがてはです」
「大逆の罪を裁きましょう」
「我等が」
「そのことは忘れるでない」
また言う六角だった。
「決してな」
「承知しております」
家臣の一人が応える。そうしてだ。
他の者達もだ。真面目に主に言うのだった。
「我等もです。決してです」
「足利将軍家への忠誠は忘れません」
「それでよい。では織田信長を迎え撃とうぞ」
そのことを決めてだ。そうしてだ。
六角はふと城の外を見た。そこには琵琶湖が広がっている。
その青い静かな水面を見つつだ。彼は言った。
「この琵琶湖が一方にありじゃ」
「そして周りに多くの支城がありですな」
「本城自体が堅固であるこの観音寺城は容易には陥ちませぬな」
「少なくとも三好殿が来られるまではもつ」
六角は絶対の自信を持っていた。己の城の守りに。
それ故にだ。どうするかというのだった。
「篭城すれば何の問題もない」
「はい、ではこのまま」
「篭城を進めましょう」
「織田信長はおそらくうつけではない」
彼にしてもだ。この考えに至っていた。
「中々の傑物。戦も強い」
「しかしですな」
「それでもこの観音寺城は陥とせませぬな」
「そういうことじゃ。この城は誰であろうが陥とせぬ」
六角の自信は揺るがない。信長に負ける気はしなかった。
その話をしてだ。家臣達に戦の用意をする様にだ。あらためて命じたのである。
六角が戦の用意を進める中でだ。信長のところには。
次から次にだ。近江の南にいる国人達が下ってきていた。その彼等に対してだ。
信長はそのまま所領を認めそのうえで織田家に組み入れていく。その彼を見てだ。
長政はだ。唸る様にしてだ。こう己の家臣達に言ったのだった。
「見事じゃな」
「はい、六角の国人達も組み入れてです」
「戦をせずに順調に進んでおります」
「これは予想外です」
「流石と言うべきか」
長政の唸る様な言葉は変わらない。
その声でだ。こうも言うのだった。
「観音寺城までは一戦もせずに済むな」
「そしてですか」
「そのうえで」
「観音寺城に迫りますな」
「うむ。しかしあの堅城もじゃ」
並の者
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ