第三十三話 八人目の剣士その八
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「生き残り願いを適えるのです」
「そういうことだな」
「そしてその戦いを導いているのが」
「あの声か。あの声の主は何者だ」
「何だと思われますか」
「神か魔だな」
そういう類の存在だとだ。権藤は看破した。
「そうだな」
「それは」
「どちらにしても人間ではないな」
「はい、そのことは間違いありません」
「そうか。人間ではないか」
話を聞いてだ。権藤は声のことはここまでのところで納得したのだった。
「そして何故私達を戦わせ願いを適える」
「それは」
「君は知っているのか。それとも」
権藤は聡美が目を伏せたのを見た。ロビーの中はあまり明るくはない。天井はかなり高い。床から何メートルはある。そしてシャングリラの光も淡い。
だから目の動きはあまり見えなかった。だがそれでもその目を見て言ったのだった。
「隠しているか。だが隠していてもいい」
「そう言われるのですか」
「君が言いたくないのならな」
それならばだというのだ。
「ここまでわかったからな」
「だからですか」
「そうだ。おそらく私がここからどれだけ言っても君はその隠していることを話さない」
権藤はそう読んでいた。そしてそれはその通りだった。
「それならいい。情報は全てわからない場合もある」
「それも政治でしょうか」
「企業の経営でもだ。他人から聞く情報はそうしたものだ」
「では」
「ここまでわかればいい」
それでだというのだ。
「君は充分話してくれた。ならな」
「そうですか」
「御礼はしよう。何がいいか」
「お金の類でしたら」
すぐにだ。聡美はそうしたものは断ったのだった。
「困っていませんのね」
「家は資産家か」
「銀があります」
「銀がか」
「銀が幾らでもありますので」
黄金と同じく非常な価値があるだ。聡美にはそれがあるというのだ。
「ですから」
「報酬は不要か」
「はい、いりません」
こう言うのだった。
「そうしたものは何も」
「そうか。しかしだ」
「報酬はですか」
「御礼は何があってもしなければならない」
権藤は確かな言葉を聡美に述べた、
「絶対にな」
「それは人としてのお考えですね」
「私のモラルだ」
「それですね」
「人にはモラルが必要だ」
権藤は言い切った。
「それがない人間は腐るだけだ」
「そうですね。人には法や道徳が必要です」
「そうした人間もいる。特に恥を知らない人間がな」
「恥をですか」
「誰だったか。こんなことを言った」
「何でもする」
こう言うのだった。
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