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久遠の神話
第三十三話 八人目の剣士その一
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                          久遠の神話
                      第三十三話  八人目の剣士
 権藤は己の屋敷で豪奢な椅子に座りながらだ。そのうえでだ。
 自分の横に控える執事が差し出すワインを受けてからこう言った。
「今わかっている剣士だが」
「旦那様を入れて七人ですね」
「剣士の数は決まっている」
「十三人ですね」
「残りは六人だ」
 数の話だった。剣士達の。
「その六人がどういった剣士達かだ」
「剣士にはそれぞれの力があります」
「それぞれが全く違う」
「はい、そうですね」
「ではどういった剣士がいるかだ」  
 権藤はグラスの中のそのロゼワインを飲みつつ述べた。
「果たしてな」
「そうですね。その残る六人の剣士の力がどういったものかを」
「知ることが必要だな」
「そのことについて書かれた文献等は」
「見つかっていない」
 権藤の知る限りそうだった。このことについては。
「一つもな」
「では知ることはですか」
「容易ではない」
「若しかすると書かれていたかも知れませんね」
「しかしその書かれたものも壊れたかだ」
「燃やされたかですね」
「歴史は時として無慈悲だ」
 権藤はこうも言った。
「その歩みの中で多くのものを飲み込んでいく」
「そしてわからないようにしてしまう」
「そういうものなのだからな」
「そして非常に気紛れでもありますね」
 執事はここでこうも言った。
「おそらくはどうした者よりも」
「そうだろな。歴史というものは不思議だ」
 権藤は冷徹なものさえ見られる手で述べた。
「なくされた筈のものが再び出ることもある」
「そういったものを調べるのが考古学ですね」
「考古学もいいものだ」
 よさも認めたうえでの言葉だった。
「そこにはロマンがある。そして何よりだ」
「その無慈悲と気紛れがですね」
「考古学を飾っているのだ」
「だからこそ人は考古学に見せられもするのですね」
「そうなるのだ。それでだが」
「はい、その剣士の力ですが」
「誰か知っているだろうか」
 権藤はグラスを左手に執事に問うた。
「心当たりはあるか」
「一つ二つ」
「私は剣士として時々何者かの声を聞くがな」
「旦那様がいつも仰っているですね
「あの声がそれなのだろうか」
「いえ、旦那様が仰っているあの声ではありません」
 それとは別だというのだ。
「また別の。それは」
「何だ、それは」
「八条大学の学生の方です」
 まずはその通う大学からだ。執事は話した。
「ギリシアからの留学生とのことですが」
「ギリシアか」
「はい、あの国からの」
「あの国の経済はな」
「最早どうにもなりませんね」
「はい、崩壊は必須です
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