第七十話 都への出陣その五
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義昭が明智達を引き連れやって来てだ。こう問うのだった。
「いよいよ攻めるのか」
「はい、そうします」
こうだ。信長は義昭のその問いに答える。
「今より都に向かいます」
「左様か。では余も同行するぞ」
こうだ。義昭ははしゃぐ様にして信長に言う。言いながらその両手をせわしなく動かす。それはまるで狂言の冠者の様である。
その冠者の様な義昭がだ。信長にさらに言うのである。
「しかし。五万じゃな」
「そこに浅井殿と徳川殿の軍も加わります」
信長のすぐ後ろについている信行が義昭に話す。
「そうしますので」
「ほう、兵がさらに加わるのか」
「それで六万になります」
「六万、最早六角も三好も敵ではないな」
信行にそう言われてだ。義昭はさらにはしゃぐ。
「では余は間違いなく将軍になれるのじゃな」
「お任せ下さい」
信長は確かな声で義昭に応える。彼の後ろには信行と近衛の者達が続く。どの者も青い具足である。織田の青のそれを着けているのだ。
その青い具足の信長がだ。義昭に話すのである。
「必ずや。都にお連れします」
「楽しみにしておるぞ」
「さすればです」
信長はだ。ここで義昭に言った。
「戦のことは我等にお任せ下さい」
「そうしてよいのじゃな」
「はい、義昭様はゆうるりと後ろにいて下さい」
「わかった。それではな」
義昭は笑みを浮かべながら信長の言葉に頷きだ。そのうえでだ。
信長に言われるまま後ろに下がる。その彼を見てだ。
信行はだ。そっと信長に囁いたのだった。
「上手くいきましたな」
「うむ、義昭様は戦を御存知ない」
信長は信行のその言葉に確かな声で頷く。だがその声は確かだが小さい。
「だからな。ああしてな」
「後ろにいてもらいますか」
「これでよい。義昭様はどうもじゃ」
「騒がしいお方ですな」
「それだけではないな」
こうだ。信長は曇った顔で弟に話す。
「妙に騙されやすいところがある」
「確かに。今もまた」
「これは危ういやもな」
その曇った顔での言葉だ。
「将軍になられてからも」
「怪しい者が側に寄れば」
「ちと。何かと注意が必要じゃな」
義昭が将軍になってからのこともだ。信長は考えて話していく。
「よいな。都はじゃ」
「はい、特に公方様の周りを」
「固めるとしよう」
都に入ってからの話もするのだった。そうしてだった。
信長が本陣に入るとだ。彼の前にだ。
青い具足と陣羽織の諸将達が控えていた。その彼等を代表してだ。
柴田がだ。厳しい声で信長に述べた。
「後は殿の御言葉だけです」
「左様か」
「はい、それでは」
「全軍に命じる」
信長はにやりと笑って述べる。
「都に向かって上洛する」
「はい、さすれば」
「
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