第三十二話 相互理解その十
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「ではだ」
「その黄金は貴方のものです」
「遠慮なく受け取る。俺が勝って手に入れるものだからな」
「では」
「この金塊はどうするかだが」
「いつもどうされていますか?」
「手に入れても。車のガソリンや遊ぶ金には使うがだ」
だが、だ。それでもだというのだ。
「しかし金には特にだ」
「感心はないですか」
「力程じゃない」
勝ち残る力、それが最も欲しいものだった。広瀬にとっては。
だからだ。こう言うのだった。
「貰って。後はだ」
「少し使ってですか」
「後は貯金するなり寄付をしている」
「えっ、寄付ですか」
「意外か。俺が寄付をするのは」
「いえ、それは」
「使いきれない金は他の人が使うべきだ」
広瀬は金というものには執着を見せないままだった。
「だからだ」
「寄付をされるのですか」
「少なくとも俺は金にはそれ程汚くないつもりだ」
「そうですね。確かに」
「君もそう思うか」
「はい、お金に執着する人もおられます」
そうした人間がいることもだ。聡美はわかっていた。世の中を支配するものの一つとして金があるのは紛れもない事実だ。それだけの力が金には確かにある。
「そのことは確かです」
「そうだな」
「はい。拝金主義といいますね」
「君は拝金主義は嫌いか」
「いえ、否定はできないと思っています」
完全にだ。そうしたことは聡美もしなかった。
「人は生きる為にそうしたものが必要ですから」
「金の不要な世界を理想とする人間もいる」
「それはかえってです」
「無秩序になるな」
「そう思います。お金は人の法やモラルによって支えられているものですから」
社会があるから金も価値があるのだ。それがない世界は何かというとだ。
「それは完全な無秩序の世界か」
「共産主義国家だ」
「あの髪を信じない国家ですね」
「君の信仰は」
「キリスト教ではありません」
すぐにだ。聡美は自分からキリスト教徒ではないと言った。
「その信仰は持っていません」
「俺はまだ何も言っていないが」
「そうでしたか」
「しかしキリスト教徒ではないか」
「はい」
「君は確かギリシア生まれだった筈だが」
このことからだ。広瀬は彼の頭にある宗教の世界地図から聡美に対して述べた。
「それならギリシア正教だな」
「そうですね。あの国の今の宗教はそうですね」
「しかしそれでもか」
「私はキリスト教徒ではありません」
こう言うのだった。聡美は再びそのことを否定した。
「ですが神は信じています」
「そうなのか」
「キリスト教ではありませんが。それでもです」
「神はキリスト教の神だけではない」
「日本ではこのことは常識ですね」
「しかし欧州では違うのか」
「そうです。違います」
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