第七十話 都への出陣その三
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「それでもじゃ。頼めるか」
「殿の御言葉とあらば」
断る筈もなかった。平手がだ。
それでだ。彼は畏まり頭を下げてだ。主に応えたのである。
「謹んでお受け致します」
「頼むぞ。しかしじゃ」
「しかしとは」
平手が問おうとするとだ。信長は彼にすぐに言った。
「ああ、顔を上げてよいぞ」
「はい、それでは」
「あれじゃ。爺は都に行ったことがないのう」
「若い頃は何度か」
「しかし近頃はないな」
そのことを確めるのだった。平手自身に対して。
「それでじゃ。何時か都に行くがいい」
「それがしもですか」
「うむ、それも学ぶうちじゃ」
それでだというのである。
「よいな。何時かは都にあがれ」
「はい、さすればその時に」
「今回は勘十郎を連れて行く」
もう一人の留守を任せる彼をだというのだ。
「そうする。よいな」
「そして勘十郎様をですね」
「あ奴に学ばせる。あ奴にはこれからも色々と働いてもらわねばならん」
信長にとっては名代にもなってもらっている。それでだというのだ。
「その為には学んでもらわなくてはな」
「よいことかと。勘十郎様にとっても織田家にとっても」
「あ奴は政の者じゃ」
信行の場合はそうだった。信長がどちらもいけるのに対してだ。
それでだ。都に行かせてだというのだ。
「政を学ばせる」
「都は朝廷に幕府がありますな」
「それじゃ。都は何かとややこしい」
「だからこそ余計にでございますか」
「うむ、そうした政を学ばせる」
つまりだ。交渉をだというのだ。それを今平手に話すのである。
「その為にじゃ」
「ではやがては朝廷や幕府とも」
信行に交渉役を担わせるというのである。平手もそのことがわかった。
それでだ。また言うのだった。
「都に入ればそうした政も加わりますからな」
「朝廷の公家衆も厄介じゃが」
信長は彼等についてまず話した。
「しかしそれ以上にじゃ」
「幕府でございますか」
「義昭殿をどう思う」
眉を顰めさせてだ。信長は平手に彼のことを尋ねた。
「あの方については」
「どうもです」
こう前置きしてからだ。平手は義昭について述べた。
「あの方は非常に誇りが高く。しかも」
「色々と覚えておる方じゃな」
「怨みは忘れぬ方じゃな」
「しかも怨みを感じることも多いな」
「それもかなり」
平手も信長もだ。義昭のその性質について話していく。
「ただ。兵を率いられることは不得手なのを御自身でもわかっておられるので」
「特に恐れることはないか」
「はい、そう思います」
「そうじゃな。ましてや幕府も弱まっておる」
先の義輝の討ち死にがさらにだ。そうさせていた。そのことがありだ。幕府の権威はさらに落ちてだ。それで今の状況があるの
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